インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

朝、プラントの入口に行くと、警備員(ガードマン)がやたら大きな声で話しかけてくる。どうして朝からこんなに陽気でハイテンションなのかなと思ったら、この人たち、顔が赤い。も、もしかしてお酒を召されてます? ああ、なるほど、みなさんが手にされているその緑色のアルミ缶は「ハイネケン」ですか。
あまり詳しくは書けないが、いま働いているこのプラントはちょっと特殊な施設で、構内の事務所にたどり着くためにはいくつかのゲートを通らなければならない。その際本来であれば入門証を換えたり、名簿への登記をしたりといったことが必要なのだが、毎日のことでお互いに信頼ができているので、我々はまずチェックされない。その上我々が使っているゲートは、本来の正門とは別に設けられた小さな専用入口なので、なおさら「顔パス」状態になっている。
ところがそれをよいことに(?)、一部の警備員は思いっきり怠惰にひたってしまう。火気厳禁のはずなのにタバコをふかし、これも構内では禁止されているビンローを噛み、ラジオを聞きながら《蘋果日報*1》を広げ、同僚と酒を酌み交わして大声でおしゃべりしつつ、酒のつまみを目当てに寄ってくる野犬たちをからかっている。せめてどれかひとつにしときなさいっての(笑)。
これだけ目に余る行為、さすがに長続きはしない。ほどなくプラントの“政風*2”に知れて、綱紀粛正の手が入る。引き締めが行われた翌日は、顔パスの私たちも車から全員降ろされて、金属探知器でボディーチェックをされたり、いかめしい顔で「タバコやライターを持ち込まないように」などと警告されたりする。そして三日もしないうちにまた元通りに。わかりやすいなあ。
ここまで茶化しておいていまさらナニだが、やはり一応つけ加えておくと、もちろんこういう警備員は一部であり、中には真面目な人もいる……ことはいる。ただやはりこれほどの怠慢は日本ではまず考えられない*3ため、それを目の当たりにした日本人エンジニアの口から「これだから台湾は……」などという決めつけに近いセリフがもれる。
う〜ん、もう少ししっかりしてほしい。偉そうなことを言えるほど私は人格者でも品行方正な人間でもないが、北京語をなりわいとしている者のはしくれとして、やはり台湾や大陸の悪口を言われるといい気持ちはしない。

*1:『アップル・デイリー(りんご日報)』。センセーショナルかつカラフルな紙面作りで知られる大衆紙。

*2:大陸の“党委”みたいな風紀委員会的性格を持った部署。

*3:絶対にないとは言わないが。