インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

通訳ガイド増へ法改正 東京集中解消ねらい国交省方針

id:Ctransさんのところで、通訳ガイドの法改正について知る。

国土交通省は、外国人旅行者に有償で旅行案内をする「通訳ガイド」の資格について、現行の免許制から登録制にする方針を固めた。資格者が少ないうえ、通訳できる言葉が英語に偏り、ガイドが首都圏に集中していることを解消するのが狙い。アジアからの旅行者が急増し、東京以外の地方への旅行も増えていることに対応する。
(中略)
同省の改正案では、免許制から登録制にした上で、日本全国でガイドができる「全国ガイド」と特定地域に限定した「地域ガイド」に分ける。試験の難易度を緩和して通訳ガイドの増加を図る。

asahi.comの記事から

現在のところ「通訳ガイド(通訳案内業)」の資格は、北京語通訳者に関しては唯一の国家資格だ。だから最低限の能力を証明する指標となっている。もっとありていに言えば、通訳者として人材派遣業者などに登録しようとする際、履歴書に書ける最低限のステイタス。これがあればとりあえずトライアルや面接には進ませてもらえる、といった感じ。
が、あくまで最低限のレベルに過ぎない。通訳ガイドの試験が行われている諸言語の中では一番の「広き門」*1である「中国語(北京語)」の資格しかない私が偉そうなことを言ってたいへん恐縮だが、ハッキリ言って通訳ガイド試験にもパスできないような人は、まだ通訳者を名乗っちゃいけません。
今回の「改正」は、それをより簡単にパスできる登録制にして、よりアマチュアレベルに近い通訳者を大量生産するということか。それにもともと「ガイド」というのは、それはそれで特殊な技能が必要な職業であり、プロのガイドさんにしても、ちょいと語学ができるだけの中途半端な人間にどっと参入されてこられては迷惑なのではないか。
またこの記事には、

また、報酬が1日平均約3万円で、遠方に同行の場合は交通費などがかかることから、利用数は伸び悩んでいる。

とも書かれてあり、結局は通訳業界・ガイド業界双方の価格破壊をより一層推し進めるための「改正」になるのではないかと思う。こうした「改正」が出てきた背景には、国内の旅行業者がアジアの旅行業者に価格の面で押し切られつつある、という事情もからんでいるようだ(→同じasahi.comの記事)。もっと安い価格で外国語のガイドサービスを提供したい、ということかな。
ただ、ガイドをしたことがある人ならわかると思うが、早朝から夜遅くまで、時には夜中にもゲストの対応をしなければならず、あれこれの下準備をし、当日は時に臨機応変な判断を迫られるなど、ガイドの仕事は非常に苛酷なものだ。その日給が三万円というのは、決して高くない。実働時間で割ってみれば、寒々とした時給になるはずだ。
とまれ、プロの通訳者にとってもガイドにとってもあまり歓迎できない「改正」だと思う。せめてこれと平行して、新たに通訳者のきちんとした国家資格を整備することを検討できないのだろうか。観光も重要だが、それ以外の分野でのコミュニケーションの重要性(特にアジア地域との)もますます高まっていると思うのだが。

*1:最近の合格率は8〜10%といったところ。一番の「狭き門」である英語は5%前後。