インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

アフターダーク

村上春樹/講談社/ISBN:4062125366)を読む。新作長編……というより「中編」くらいの長さ。
本の帯に「『風の歌を聴け』から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹」という惹句が書いてあって、ああ、編集者もとまどっているんだな、と感じる。短い小説だから何を書いてもネタバレになりそうなので、ひとつだけ。
物語の途中で「中国語」の通訳をする場面が出てきて、おおっと身を乗り出す。主人公(のひとり)は外国語大学で語学を学んでいるのだ。村上春樹は「通訳」と「翻訳」をけっこういい加減に使い分けていて(使い分けていなくて?)、ああ、この人らしいはずし方だなあと思う。もうずいぶん前から、村上氏はこういうおじさんくさい不注意なはずし方をするようになっていて*1、「マツキヨ」とか「スガシカオ」とか、その言葉のぎこちなさが「イタい」。
「イタい」けれども、これは他の作家には書けない、まぎれもない村上春樹の小説。私は好きだ。
思えば前作の『海辺のカフカ』が発売されたころ、その単行本を持って台湾に赴任した。村上春樹の新作書き下ろし長編を二作品も読めてしまう……いや、これはちょっとした「歳月」だなあ。

*1:ちょっと差別的ですが、ま、私もとうに「おじさん」だから許して。