インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

Chieko-sanさんの「私の英語 音読で英会話」(http://plaza.rakuten.co.jp/native33/)に、通訳者・新崎隆子氏の講演録が掲載されている。通訳の仕事入門といった内容だが、とてもおもしろい。その中で「通訳に必要な三要素」として正確さ・的確な訳語、そしてスピードが挙げられていた。
スピーカーの中には、自分の発言とほぼ同等の時間が通訳に費やされることに対してイライラする人がおり、逐次通訳といえどもある程度のスピードが要求される、という話のあとに、「頭出し」の話題が出てくる。孫引きで申し訳ないが、こんな内容だ。

それで、よく言うのは、通訳の頭出しっていう言葉があるんですけれども。オリジナルの話が終わった後に通訳(である自分)が話し始めますよね。それまでの時間、を頭出しというんです。いつも通訳学校で生徒に教える時には、「頭出しは3秒以内に!」と、言っています。
3秒というのは、どれぐらいかというと、ちょっとやってみましょう・・・(時計を見て、秒針にあわせて、3回、コツコツコツとテーブルをたたき、)・・・ですよね。
長いです。2秒なら耐えられる。だけど、3秒沈黙が続くと、「あの通訳大丈夫かな」とそういう反応がうわーっとでてしまう。(改行位置を調整しました)

零細出版社の編集者をしていた頃、とある顧客との打ち合わせで、英語の通訳者になるために勉強中という広報担当と雑談になったことがある。通訳学校での訓練を紹介してくれた彼女の話の中に、この「頭出し」のことも出てきた。「とにかく大変なんです。発言を聞き終わってイチ・ニ・サンで訳し始めなきゃいけないんですから」。当時、私の頭の中には通訳者になるなどという考えは全く芽生えていなかったが、その話を聞いて「わーっ、すごいなー」と強い印象を受け、「かっこいいなー」と感動したことを覚えている。
その後、通訳学校に私も通ったが、そこでは特にこの「頭出し」について訓練は受けなかった。ただ実際に通訳をしていると、頭出しに三秒以上費やせばいやでも周囲からの「うわーっ」という反応がひしひしと感じられる。だからそのプレッシャーをはねのけるため、とにかく間髪を入れずに訳出をスタートするように*1――これは自然にそうなった。
一方で、通訳学校では「訳し始めたら途中で止めない!」「言い切りなさい!」とよく注意を受けた。確かに通訳者が途中で口ごもってしまったら、それこそ「あの通訳大丈夫かな」という反応が「うわーっ」と広がること必定だ。

*1:実際には、発言を聞いている途中で訳出を組み立て始めていると思う。