インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

朝、急に会議の通訳をするよう言われる。今週四日間にわたって行われる会議の初日で、フランスの顧問会社を招いて行われる技術会議のため、もともと英語で開催されるはずだった。ところが今日の朝になって台湾側が急遽予定を変更したのだ。
通訳をしろと言われたって、誰が参加して何を話すのか全く知らされていない。資料だってただの一枚ももらっていない。「無理です」という暇もなく会議室に連れて行かれ、分厚い英語のレジュメがどさっと目の前に置かれ、みんな「なに、内容は簡単だから。言った通りに訳してくれればいいから」とのたまう。
私が非常に残念だったのは、いつも官僚的で通訳者に全く理解のない台湾側の代表はまだしも、これまで長い間つきあってきた日本側のスタッフも、結局通訳者の仕事についてこれっぽっちも理解していないと痛感したことだ。技術会議のたびにあれだけ事前の資料をしつこいくらい求め、予習なくしては正確な通訳はおぼつかない、それはひいては日本側の不利益にもつながる、ということをくり返し主張してきたのだが。
通訳者は発言者の言葉を訳すのではない。意図を訳す。発言の背景を全く理解させずに、テクニカルタームも予習させずに、「このΔδを荷重として材料に与えた場合、ポアソン効果によりすべて圧縮場となります」みたいな発言を訳せるかっちゅ〜の。
今日の日本側代表をつとめた主管は、私がこれまで一番多くの時間を通訳でお供してきた人だが、その人にしていまだに「言った通りに訳せばよい」とはなあ。通訳者は機械じゃないのだ。単語を一つ一つ反射的に置き換えているわけではないし*1、「コノデルタスモールデルタヲカジュウトシテザイリョウニアタエタバアイ、ポアソンコウカニヨリスベテアッシュクバトナリマス」という音声を聞けば自動的に北京語が出てくるわけではないのだ。
台湾側の発言者も“国語”と英語を半々くらいに混ぜて発言する人あり、フランス人の顧問が英語で発言したあと「訳して」と私に要求する人あり*2、とにかく会議じたいが大混乱。かと思えば日本語と“国語”で延々討論を続けたりして、これじゃ完全にかやの外に置かれてしまったフランス人顧問にも失礼じゃないか。

*1:ごくごく短い簡単な会話ならそれもありうるが。

*2:あの〜、私は英語の通訳者じゃないのですが……。