インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

相手は覚えていないでしょうけど。

林家たい平という落語家がいる。若手の中では今最も成長株と期待されている気鋭の噺家だそうだ。きょう、雑誌で彼の記事を読んでいて、どこかで見たことがある人だなと思った。自分と同じ出身学校名が出てきて、ようやく「あっ」と気づく。私も相当にぶい。あの「落研」の部長さんじゃないか。
学生時代、私は「劇研」にのめり込み、焼き畑農業のように青春をせっせと灰に変えていた。大きな会議室をベニヤ板で仕切っただけのサークルボックスと呼ばれる小汚い部室があって、「劇研」のとなりが「落研」だった。若き日のたい平氏、たしかデザインか何かの専攻だったが、私と同様に自分の専攻はどこへやら、サークル活動にのめり込んでいた。
部室で演出プランを練っていると、隣からよく落語の稽古をする声が聞こえてきた。ときに部室の片隅に座布団を敷き、プライベートな高座をやっていたので、私も何度か聞いたことがある。彼は卒業時、噺家に弟子入りするというのでちょっと話題になった。確か「僕は言葉のデザインをしたい」とかなんとかいう見出しで新聞の地方版に載ったのじゃなかったか。
私も落語は好きでよく寄席に行ったり、独演会を聞いたり、こうして海外にいる時は落語のCDをネット通販で買ったりしているが、うかつにも林家門下は食わず嫌いであまりマークしていなかった。
もう一人、高校時代の同級生で藝人になった男がいる。もう顔もおぼろげにしか覚えていないが、彼は今「寒空はだか」という名前であちこちの舞台に立っているそうだ。熱狂的なファンもついている、その筋ではけっこう有名な藝人らしい。彼の舞台もまだ見たことがない。