インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

北一輝』(渡辺京二/朝日選書/1985年)を読む。人類史や日本の近代史、政治思想史から文学まで、幅広い分野の論考を発表してきた在野の評論家による北一輝論。四半世紀も前の本(朝日選書版は再刊)だが、古さなどみじんも感じさせない。
十年以上前、熊本市にある真宗のお寺で私的に開かれていた読書会に、縁あって何度か参加した。そこで座長をされていたのが渡辺京二氏だった。私は面識もなかったし、読書会での討論も非常に難しくてほとんど覚えていないが、渡辺氏の博覧強記ぶりと冷ややかさの中にもユーモアを感じる鋭いコメントの印象だけが残っている。読書会で渡辺氏にお会いする前に読んだ、彼の最初の評論集『小さきものの死』(葦書房/1975年)は、若い(今でも若造だけど、いちおう)私にとって衝撃だった。人生が変わった本といってもいい。今や蔑みの言葉になった感のある「プロ市民」の問題についても、すでにこの時期に論じられている。