インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

みんな私に向かってしゃべる

通訳をしていて面白いのは、発言者がみんな私に向かってしゃべるということだ。テーブルでの小さな打ち合わせから、何十人もが参加する大規模な会議まで、主役はあくまでも私の隣にいる日本企業の職員や、向こうに座っている台湾側の代表のはずだ。私はといえば、単にコミュニケーションの間を取り持っているだけで、できることならその存在を消してしまいたいくらい。なのに、いずれもお互いの相手に向かってではなく、私に向かって話をする。しかもお互いが話を通じさせよう、コミュニケーションを成立させようとすればするほど、そうした傾向は強まる。
これが何とも居心地が悪い。前向きの会話をしているときはそうでもないが、批判や不満を言い合っているときなど、話し手のそうした気持ちやオーラのようなものが直接私にぶつかってくるのだ。別に相手から批判されているのは私ではなく、相手に不満をぶつけているのも私ではないのだが、双方の話し手は、ついつい私を批判し、私から不満をぶつけられているように感じてしまうものらしい。