インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

音楽

あいうえおの歌

第二次世界大戦時の1942年から1945年にかけて出版された、『FRONT』(フロント)という大判のグラフ誌があります。原弘、木村伊兵衛など、後に昭和を代表するデザイナーやフォトグラファーとなるメンバーが所属していた、大日本帝国陸軍参謀本部の直属出版社…

『桃太郎』に感じる小さな疼きのようなもの

留学生のための一般教養講座で『東アジア近現代史』という授業を担当しています。毎年その授業の一環で『桃太郎 海の神兵』という、1944年に海軍省の後援で制作されたアニメーション映画を紹介しています。この映画のクライマックスに出てくる、落下傘部隊が…

新しい歌を歌う

在宅勤務が長期間に及び、これまでになかった形でのオンライン授業や遠隔授業などの準備と実施に追われているうち、先週や先々週あたりはちょっと心身ともに疲れ切ってしまっていました。やることは次々に立ち現れてくるのに、身体がどうにもだるくて、心も…

「Pretender」とシンコペーション

YouTubeでチャンネル登録していつも見ている、Dr. Capital氏の動画。先日はOfficial髭男dismの「Pretender」を取り上げていました。いつもの通り、音楽理論の豊富な知識を背景に、「こんな魅力が隠れていたのか!」と気づかせてくれる切り口がとても新鮮です…

バッハ・古楽・チェロ

先日の東京新聞に、オランダのチェリスト、アンナー・ビルスマ氏のCDに関する小さな記事が載っていました。親交のあった日本の音楽評論家・佐々木節夫氏の死去に際し、ビルスマ氏の発案によって東京の教会で行われた追悼コンサートを収録したCDが発売された…

お土産は籠の鸚鵡

先般、NHK『チコちゃんに叱られる!』の「岡村の嫁探し」について、その古い言語感覚はいかがなものか、というような文章を書きました。同じように感じておられる方は多いんじゃないかなと思い、何らかの動きがあるかしらと変な意味で先週の放送を意味で楽し…

歌って楽しむ外国語

図書館で借りた黒田龍之助氏の『外国語の水曜日―学習法としての言語学入門』という本を読んでいたら、「歌は外国語の学習に多大な効果をもたらす。発音練習にもいいし、文化に触れることにもなる」と書かれていました。たしかにそうかもしれません。私もかつ…

カーテンの向こうに

年始の帰省ラッシュを避けて、年越し前に実家がある北九州市から東京に戻りました。スターフライヤーの座席も空席が目立っていました。機内のビデオサービスを適当に選んで見ていたら、10分弱ほどのショートショートフィルムが二作品流れていて、一本はイタ…

Dr.Capital氏が解説するスピッツ

いつも楽しみに視聴している Dr.Capital(ドクター・キャピタル)氏の YouTube動画。久しぶりに更新を確認しに行ったら、なんと私の大好きなスピッツの曲が氏のアレンジで披露されていました。スピッツ (Spitz) の チェリー (Cherry) - Dr. Capitalこの動画…

Spotifyもやめちゃった

これまで、音楽ストリーミングサービスのSpotifyを「プレミアム」、つまり広告なしで聴き放題できるというプランで利用してきたのですが、先日無料プランに戻しました。追って退会手続きもしようと思っています。Spotifyはポップスやロックはもちろん、私の…

イヤーワーム

ふと気がついたら、脳内で特定の音楽がヘビーローテーションしていたってこと、ありませんか? 私はよくあるんですけど、あれには「イヤーワーム(earworm)」という名前がついているそうです。しかも様々な調査で、およそ9割以上の人が日常的に経験してい…

井上陽水英訳詞集

ロバート・キャンベル氏の『井上陽水英訳詞集』を読みました。書店でたまたま手に取ったのですが、歌詞の原文とその対訳が収められているだけの訳詞集ではなく、翻訳を行う際にキャンベル氏が日本語と英語の間を何度も行き来しながらその言葉の森に分け入っ…

ようやく音楽になってきた

「やりたいことは老後に時間ができてから」などと言って、いざ老後になったら心も身体もすでに新しいことをやる元気が失われているのではないか……ということで「やりたいことは今すぐこの場で待ったなしで」の精神でピアノの練習を始めて三ヶ月ほど。qiancho…

レトロな「あいみょん」について

昨年の秋ごろでしたか、ジムでトレーニングしているときに偶然BGMでかかっていた、あいみょん氏の『君はロックを聴かない』。面白い歌詞だなと思ってすぐにSpotifyで探し、それ以来よく聴いています。youtu.be 君はロックを聴かない若い女性シンガーの声なの…

無人島に一枚だけレコードを持って行くとしたら

「無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら?」という問いがあります。繰り返し繰り返し熟読玩味するに足る愛読書を持っているかどうか……というのはなかなかに厳しい問いですよね。それまでの読書体験と、この先の人生観を同時に問われているようなものです…

ブラボーおじさんと雑音許せないお兄さん

昨晩はキット・アームストロング氏のピアノリサイタルに行ってきました。プログラムはクープランのパッサカリア、 バッハのトリオ・ソナタ、フォーレの「9つの前奏曲」ほか、17世紀イギリスのウィリアム・バードのチェンバロ曲や、リストの「バッハの動機に…

キット・アームストロング氏の音楽

バッハに「パルティータ」という曲のシリーズがあります。バッハのなかでも特に好きな作品で、グレン・グールドが弾くそれは愛聴盤(ストリーミング時代に「盤」もおかしいですが)として繰り返し聴いています。open.spotify.comところが先日Spotifyで、これ…

下定決心,不怕犧牲。

華人留学生の通訳クラスで、教材に「爭取清真的商機」というフレーズが出てきました。「清真」は「イスラム教の」という意味で、「商機」は商機、つまりビジネスチャンスのことですから、いまふうに言えば「ハラールビジネスのチャンス」とでも訳せるでしょ…

留学生と小謡

留学生の通訳クラスで「通訳実践トレーニング」という科目がありまして、私が担当しています。「通訳実践」だから現場に出てどんどん通訳をする……のではなく、通訳を実践するために必要なさまざまな基礎的トレーニングを行うという科目です。だからほんとう…

ネットでピアノを学ぶ

『ゴルトベルク変奏曲』のアリアを死ぬまでに弾けたらいいなと思って、ピアノの先生を探しているのですが、なかなか「ご縁」に恵まれません。最初に、うちの近所でやってらっしゃる個人の先生宅に体験レッスンを申し込んで行ってきたんですけど、先生は何だ…

ピアノを買う

先日、調べもので厚生労働省が発表している「簡易生命表」を読む機会がありました。簡易生命表というのは現時点での状況が今後変化しないと仮定した上で「各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを死亡率や平均…

パリ左岸のピアノ工房

小学生の頃、ピアノを習っていました。関西地方にかつてよく見られた棟割長屋のような「文化住宅」の一室が教室で、先生はその部屋でピアノだけでなくなぜか書道(毛筆と硬筆)も教えている、かなり年配のご婦人でした。練習の順番を待つ部屋にはマンガ雑誌…

ポリリズムと変拍子

「ポリリズム」という曲をご存じでしょうか。youtu.be10年以上も前に発売された、Perfumeの代表作となっているこの曲。この「ポリリズム」が世に出る前の経緯をウィキペディアで読むと、少なからず驚きます。途中で出てくる複合拍子(ポリリズム:二つ以上の…

母音の発声について

先日、謡のお稽古をしている際、師匠から「音程が上がったときの母音、特に『あ』の段が汚くなるので気をつけてください」と言われました。「以前よりもずいぶんきれいになりましたが、もう少し『引いて』丁寧に。でも声を小さくするわけではないですよ」と…

しまじまの旅 たびたびの旅 82 ……たこ焼きとカンテ・グランデ

子供の頃と浪人生時代に住んでいた大阪には、思い出の場所がたくさんあります。まずはたこ焼きの「うまい屋」さん。天神橋筋の商店街にあるこのお店は、いたって庶民的なたこ焼き(+夏にはかき氷なども)屋さん。ここも「自由軒」同様、たこ焼きをつまみに…

『七里香』を紹介したテレビ番組に対する違和感

Twitterのタイムラインで、こんなツイートに接しました。中国 サンマが大ブーム 火付け役は中国の"フクヤマ"#しゅうけつりん#ジェイチョウ#周杰倫#七里香 #台湾#秋刀魚 #モーニングショー #テレ朝 pic.twitter.com/7D2LB5RbMo— Kumi (@tokyohongkong) 2018年…

「HINOMARU」の文語調について

先日来、RADWIMPSの新曲「HINOMARU」を巡って、ネット上には様々な情報が飛び交っています。私はその歌詞を一読して「なんだこれ?」と思った以上の感情は湧かなかったのですが、右や左の旦那様、じゃなかった皆々様の中にはことさらに神経を刺激された方も…

小学二年生に圧倒されました

先日のお能の「温習会」、番組の一番最初は男性参加者による連吟「猩々」でした。お師匠がFacebookに写真を投稿されていましたが、ずらっと並んだ紋服姿のおじさんたちの前に、かわいい少年が一人座っているのがお分かりでしょうか。 この少年は小学校二年生…

お能の稽古における一見相反するような指示

昨日は能の温習会の「申し合わせ」でした。「申し合わせ」については、the能.comの「能楽用語辞典」に簡にして要を得た解説が載っています。 能・狂言の「リハーサル」のこと。通常、上演当日の数日前に諸役が集まり、当日と同様の流れで行われる。面や装束…

お能の温習会

趣味でお稽古をしている「お能」ですが、今年も年に一度の温習会(発表会)が迫ってきました。年に一度ですからそれなりに気合いも入ってはいるのですが、なにせ仕事や家事に追われる毎日で、ろくに自宅で稽古もできません。まあ時間があったってそんなに大…