インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

通訳・翻訳

公式サイトや研究不正に見る翻訳への無理解

これまで、東京都台東区公式サイトや元SMAPメンバーによるユニット「新しい地図」における、機械翻訳丸投げによる珍妙な中国語や英語をさんざっぱら批判ないし揶揄してきました。こうしたサイトの珍妙な翻訳は、私が奉職している学校の幅広い国や地域の留学…

星条旗の51番目の星

スマホで中国語の講義をいろいろと聴ける『得到』というアプリがありまして、その中の名物講義のひとつに“罗胖老师”こと罗振宇氏の『罗輯思維』というのがあります。ご自分の姓“罗(羅)”を使い、“逻辑思维(ロジカルシンキング)”をもじって『罗輯思維』で…

「ひとさまの通訳を聞いて」のその後

先日、北海道日本ファイターズの台湾人選手・王柏融氏へのヒーローインタビューで、通訳者さんの訳がテキトーすぎるんじゃないか、ファンは怒った方がいいんじゃないかという記事を書きました。qianchong.hatenablog.comこれについて、Twitterで野球やスポー…

ひとさまの通訳を聞いて

これまで、自分が通訳している音声や映像がネットにアップロードされたことが何度かありました。それはラジオ番組だったり,YouTubeだったりするのですが、業務終了後も半ば永遠にこうやって訳出が晒されるのって、ちょっと理不尽でもありますよね。それはさ…

背景知識が後押しする訳出

こちらの動画、任天堂がアメリカで『ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ』というゲームをプレゼンテーションする「ツリーハウスライブ」の様子です。youtu.beこの映像を見て、多言語コミュニケーションの新しい地平を見るような感覚にとらわれました。…

「めっちゃ、ヤバいっす」をめぐって

日頃から、いわゆる「日本語の乱れ」についてはできるだけ寛容でありたいと思っています。私は日本語母語話者ですが、言葉は世につれ人につれ常に変化していくものですから、私の「よし」とする日本語だけが正しいとはとても言えないからです。これはまた、…

留学生の通訳教材に頭を悩ませる

新学期が始まるこの時期。今年も外国人留学生の通訳クラス(私の場合は華人留学生の「中日通訳」)を担当することになるのですが、毎回教材の準備に頭を悩ませています。ある程度訓練が進んだ生徒なら、ネットに数多ある動画から講演やセミナーや説明会など…

「落とし穴満載感」ハンパない通訳者のお仕事

「シンクロニシティ」という現象をご存じでしょうか。Wikipediaには「複数の出来事が意味的関連を呈しながら非因果的に同時に起きること」と何やら難しいことが書かれていますが、要するに特に意図したわけでもないのに暮らしの中で起こる奇妙な符合のことで…

通訳者に女性が多い理由と男性の家事

春は学校の学期が変わる季節。私が非常勤でうかがっている通訳学校も生徒募集のための公開講座が何度か開かれ、私も出講してきました。講座の最後にQ&Aの時間があるのですが、先日はこんな質問が寄せられました。 日本の通訳業界は圧倒的に女性が多いそうで…

医療通訳の現場で見落とされているもの

昨日Twitterのタイムラインで読んだこちらの記事。外国人観光客や在留外国人の増加に伴って、医療現場でもきちんとしたコミュニケーションを確保する必要が生まれているという話題です。style.nikkei.comスイスの作家マックス・フリッシュ氏が語ったとされる…

語学が楽器演奏や筋トレに似ている件について

集英社の季刊誌『kotoba』、現在発売中の春号は特集が「日本人と英語」で、合計百数十ページにわたって多彩な論者が登場し、とても考えさせられる内容です。その中で、マーク・ピーターセン氏とピーター・バラカン氏の「日本語と英語のはざまを考える」と題…

「サカイマッスル」をめぐる騒動を眺めながら

数日来「サカイマッスル」の話題でTwitterが盛り上がっていました。大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)の公式サイトにある外語ページが、「堺筋」を “Sakai muscle” とするなど自動翻訳ソフトによる珍妙な訳語をそのまま使っていたことから、指摘を受けて閉鎖に…

ペダンチックな私

先日YouTubeでいくつかの「TEDトーク」を視聴しているうちに、ウィル・スティーブン氏の「TEDxで賢そうにプレゼンする秘訣」という動画に偶然行き着きました。youtu.beスタンダップコメディみたいな一種のお笑いパフォーマンスですけど、いかにもTEDふうのプ…

通訳者の仕事は時給換算できる?

とあるイベントでの通訳業務を仰せつかりまして、徐々に予習を始めていたのですが……。当日の午前中に急遽授業の予定が入ってしまい、代講もできない状況だったので、イベントを主催するクライアント(お客様)に集合時間を遅らせることができないかどうかと…

「どれだけ学べば稼げるか」をめぐって

年度替わりが近づくこの時期は、各種スクールで新学期の生徒募集が行われており、私も体験授業や学校説明会などに講師として参加することがあります。そういった場では最後に「Q&A」の時間が設けられているのですが、興味深いのは「このスクールにどれくらい…

言葉のヒゲを刈り込むには

「冗語(じょうご)」という言葉があります。発言する際に、おおむね無意識のうちに差し挟まれる、発言の内容とは関係のない言葉のことです。例えば、話し始めに入る「えー」とか「あのー」「そのー」「このー」といった間投詞、あるいは「〜でですね」とか…

『ナカイの窓』と同じ心性は自分にもあるかもしれない

コンビニで働く外国人労働者の日本語を揶揄したこちらの番組が、TwitterなどのSNS上で「大炎上」していました。詳しい経緯はこちらの記事で知ることができます。wezz-y.com私も以前Twitterで以下のようなツイートをしたことがあるのですが、こうした、ちょっ…

列車がまだ駅に到着していません

先日偶然見かけたこちらのツイート。先ほどの出来事ズボンのチャックが開いているのに気付かず電車乗ってしまってた(やばいやつ)ただ近くにいたイタリア人男性が気を利かせてGoogle翻訳したスマホを見せてこっそり知らせてくれてイケメンだった。【翻訳内…

「ナチュラルに見下している」差別について

先日報じられていたこのニュース、なんとも後味の悪い感覚が残りました。www.oita-press.co.jp別府大分マラソンでボランティア通訳者を務めた50代の女性が、担当した選手について「原始人とコミュニケーションをしている感覚でした」とか「最初はシャイだっ…

内向型人間のすごい力

スーザン・ケイン氏の『内向型人間のすごい力』を読みました。内向型と外向型という二つの性格の型をめぐって、これまでの研究から明らかにされた科学的知見を元に、企業や教育現場などでの対人関係のあり方を論じた本です。 内向型人間のすごい力 静かな人…

遺体修復士のことば

今日も今日とて趣味(と実益を兼ねた)のディクテーションをやっていたわけですが。こちら↓は語速もゆっくりだし、そんなに難しい言葉もつかっていないけれど、とても深みのある動画で、通訳クラスの教材に使ってみようかなと思いました。極道から足を洗って…

カタカナ用語が好きなんだなあ

今朝がた、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおけるボランティアの愛称が決まったという報道に接しました。www.asahi.comオリパラについては、①大会役員やスポンサー企業は大儲けする一方での炎天下のタダ働きなどに応募する方の気が知れない+②国威…

愚直に楽しく語学を続けるために

先日、せっかく習い覚えた外語を忘れないために、ウェブ上の動画などを使って「聽說讀寫(聴く・話す・読む・書く)」を一応ひととおり鍛えられる方法をご紹介しました。qianchong.hatenablog.comあとは愚直にやるだけなんですけど、ディクテーションは少し…

語学と「恥」あるいは「芝居っ気」

日ごろ語学を教えたり、自らも生徒となって語学を学んだりしていてよく思うのは、語学学習の過程というのは一種の「演技」なんだな、ということです。唇や舌や声帯を日本語とは違うやり方でぎこちなく用いながら、そしておそらく日本語を話している時にはあ…

学んだ外語を忘れないようにするために

ある留学生からこんな質問を受けました。 センセは中国や台湾で暮らして中国語を学んだあと日本に戻ったそうですけど、その中国語をどうやって忘れないようにしていますか。 おおお、いいご質問です。確かに語学は筋トレのようなもので、外語はいわばその結…

下定決心,不怕犧牲。

華人留学生の通訳クラスで、教材に「爭取清真的商機」というフレーズが出てきました。「清真」は「イスラム教の」という意味で、「商機」は商機、つまりビジネスチャンスのことですから、いまふうに言えば「ハラールビジネスのチャンス」とでも訳せるでしょ…

留学生と小謡

留学生の通訳クラスで「通訳実践トレーニング」という科目がありまして、私が担当しています。「通訳実践」だから現場に出てどんどん通訳をする……のではなく、通訳を実践するために必要なさまざまな基礎的トレーニングを行うという科目です。だからほんとう…

ピダハン

ダニエル・L・エヴェレット氏の『ピダハン』を読みました。ブラジルアマゾンの奥地に住む少数民族・ピダハン族の言語を、30年近い歳月をかけて調査してきた記録です。 ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観言語を構成する音素が約10個と極端に少なく…

語尾上げの殺意

劇作家の永井愛氏に『ら抜きの殺意』という戯曲があります。これは「来れる(来られる)」「食べれる(食べられる)」のような「日本語の乱れ」を題材にした傑作喜劇です。こちらの記事で詳しく解説されています。business.nikkeibp.co.jp私自身は「ら抜き言…

広場ダンスと忠字舞

先日、通訳訓練のひとつ「サマライズ(要約)」の授業で、こんな興味深い動画を使ってみました。中国のお年寄りがどうして「廣場舞」に興じるのかについて、「廣場舞」のドキュメンタリー映画を撮った監督さんが解説をしています。youtu.be中国語の「廣場舞…