インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

通訳・翻訳

武漢の新型肺炎とネット翻訳

中国の武漢で拡大が続いているとされている新型ウイルス肺炎、日本での報道が加熱してきました。報道に接する私たちは「正しく知り、正しく怖がる」ことが大切だと思うのですが、こうなってくると物事を冷静に判断できない人が増えてくるのは世の常。かつて…

機械翻訳は便利だけれど

昨年の夏、フィンランドを旅行した際に泊まった「民泊」のおかみさんからAirbnbのサイトを通してメッセージが届きました。フィンランド語なので、じーっと見つめて「こんな意味かしら」と見当をつけてから、おもむろにGoogle翻訳へ放り込んで文意を確認しま…

海洋ゴミに関する通訳教材

留学生の通訳クラスで、こんな映像を教材に使ってみました。いま大きな問題になりつつある「海洋ゴミ」をテーマにした講演です。【一席】劉永龍:海洋垃圾為什麼是個問題いま現在わたしたちが直面している、待ったなしの課題を扱っています。こうした内容を…

雪が「hi-la-ha-la」と降ってくる

なにかの外語を学んで「達人」の域に達した方が、自分の母語と比較してその外語を語っている文章を読むのが好きです。どうやって外語を学ぶのかというヒントが見つかるのもさることながら、そうした方、例えばそれが日本語母語話者であれば、その視点は母語…

「ポエムになっちゃった」看板のその後

門司港駅周辺を散策してきました。以前来たときは門司港駅の修復工事中だったのですが、すっかりきれいになっていました。構内の改札口にこんな看板があって「これは!」と思い出しました。確か今年の夏頃にブログの記事を書いたことがあったはずです。 そう…

インタープリターズ・ハイ

年の瀬も押し迫ってまいりまして、留学生の通訳クラスは定期テストを行いました。この定期テストは、CALL教室で各自が合計一時間あまり延々と通訳し続けます。全体の三分の二ほどは授業で訳出練習をした内容の復習ですが、残り三分の一は「初見」、つまり初…

さよなら通訳業

先日、今年最後の「ミッション・インポッシブル」を終えました。とある理系学会のシンポジウムでの通訳です。私は根っからの文系人間なので、数値や数式や技術用語が飛び交う理系のお仕事はまるっきりの門外漢で(文系のお仕事だってそのほとんどが門外漢で…

通訳の訓練「だけ」していれば通訳が上手になるか

今年も残すところあと数週間。年が明けても学校の授業はほぼ1月中旬から始まり、程なく卒業のシーズンを迎えるので、実質的な授業日数はもうそんなに残っていません。2年前の春に入学してきた留学生のみなさんも、就職先や進学先が徐々に決まり始め、より…

留学生のカンニングに対して

留学生の通訳クラスでは、学期の間に何度か「単元テスト(小テスト)」を行います。テストといっても、通訳している音声を録音して仕事に耐えうるレベルかどうかを判定するだけで、しかもその内容は事前に授業で一度訳したものです。実際の現場における通訳…

留学生による日本語劇

秋に入り、文化祭の季節がやってまいりました。私が奉職している学校のあるキャンパスでも、学生さんが様々なイベントを行います。このキャンパスは大学院・大学・専門学校の複合施設なのですが、私が担当している専門学校の、通訳や翻訳を中心に日本語を学…

語学は確かに役には立つけれど

現在、複数の仕事を掛け持ちしていますが、メインで働いている職場は東京都心のターミナル駅から歩いて10分ほどのところにあります。その道の途中にとあるオフィスビルがあって、その前を通るときはいつもビルの8階か9階あたりを見上げてしまいます。以前…

調べてから聞いてほしい

プロ野球選手のダルビッシュ有氏が、「せめてある程度勉強してからメッセージください」とSNSで発言したことが話題、という記事を読みました。ネットで調べ物をしていた際のことです。この発言はTwitterでなされたもののようですね。 news.nifty.com なるほ…

語学における「威張り系」や「昔取った杵柄系」について

昨日は都内のとある通訳学校で、一日限りの短期講座を担当してきました。私みたいに細々と通訳業務や通訳教育を続けているだけの人間が講師というのも申し訳ないのですが、幸いにも毎回満席で、こちらも身が引き締まる思いです。一日限りなので、ふだんこの…

「通訳訓練でマスクを外さない」のは是か非か

あちこちの学校で教える立場に立っていると、いろいろな生徒さんに出会います。私が奉職してきたのは主に職業訓練的な学校で、仕事に直結させるスキルを訓練する場所なので、そこに通う生徒さんたちは当然「その職業につくためにはどうすればよいか」を真剣…

母語なのに聴き取れない

華人留学生(出身地は中国・台湾・香港・マカオなど様々)の通訳訓練クラスを担当していると、時々おもしろいことが起こります。華人留学生なのに、つまり中国語が母語や準母語*1であるみなさんなのに、教材の中国語が分からない、あるいは聴き取れないこと…

フィードバックをもらえるありがたさ

通訳学校は現在、秋学期の生徒募集時期ということで、どちらの学校も無料公開講座やセミナーなどを開催されています。eラーニングやネット動画を使った教材も増えている昨今、毎週毎週教室に足を運んで訓練する昔ながらのやり方じゃなくてもいいんじゃないか…

しまじまの旅 たびたびの旅 91 ……「プア」な英語でも旅は進む

タンペレでは民泊(Airbnb)を利用したのですが、ホストが到着日時を勘違いしていたらしく、宿泊場所についても誰も応答してくれませんでした。仕方がないのでAirbnbのアプリからホストに電話するもつながりません。何度電話してもつながらないのでおかしい…

語学の「通学」に向かない方もいる?

留学生の通訳クラスでは、カリキュラムに演劇を取り入れています。これは日本語を「肉体化」してより活き活きと話せるようにするため、また人前で誰かに成り代わって話すという通訳者のお仕事の特性に鑑みて取り入れているものです。ネット上にある寸劇やコ…

「ジョンソン」と「トランプ」の中国語表記をめぐって

イギリスでは保守党の党首選が行われ、当選した元外相のボリス・ジョンソン氏が首相に就任しました。海外の政治家など著名人の去就があった際、そのお名前を中国語でどう言うのかしら……というのが気になって、私はすぐに調べるのですが、ジョンソン氏は“約翰…

英語と数式満載の「理系」資料が出てきたら

通訳クラスで「素数」についての教材を扱いました。通訳者を目指す方はどちらかというと「文系」の方が多く(私もそうです)、数学だの物理だの科学技術だのといった「理系」の内容に疎い、あるいは苦手という方が多いです。でも一方で、実際のお仕事はむし…

「話し方の訓練」をしているのかな

昨日は台湾の某テレビドラマに関連した「ファンミーティング」のお仕事でした。ドラマに出演している俳優さんたちが来日して、ファンとの“互動*1”をしたり、フォトセッションをしたり、握手会をしたり……。これまでにも何度もこうしたお仕事をしてきましたが…

あえて日本語で話すことが「クール」なのにね

先日、華人(チャイニーズ系)の留学生は、非漢字文化圏の留学生に比べて日本語の音声に対するこだわりが薄そうだ、それはたぶん漢字という強力なツールがあるために、日本語の音に頼らずとも深い理解が可能だからかもしれない……という話を書きました。qianc…

ポエムになっちゃった

Twitterのタイムラインで、とても興味深い写真を見かけました。門司港駅の改札に掲げられている横断幕の写真です。日本語の文章の多くには主語がないんですが、英語に訳すと主語を入れる必要があります。機械翻訳ができない作業です。尚、are stoppedを言う…

翻訳の好みは人それぞれ

留学生の通訳翻訳クラスで「通訳翻訳概論」という授業を担当しています。通訳学や翻訳学の専門家でも何でもない私が担当するのは正直に申し上げて荷が重すぎるのですが、「そもそも通訳や翻訳とはどんな営みなのか」を様々な例を挙げながら学んでいくという…

シャドーイングにご用心

外出しているときは、たいていイヤホンを耳に装着して音を聞いています。音楽を聴いたり、能の謡を覚えるために聴いたりすることもありますが、たいていの場合は語学教材の「シャドーイング」をしています。中国語を使う仕事に向かうときは、速めの中国語教…

中国語圏の学生における発音とリスニングの弱点について

私が担当している留学生の通訳クラスは、中国語圏の学生と「それ以外」の学生がほぼ半々で在籍しており、中国語圏の学生は日中・中日通訳を訓練し、「それ以外」の学生は日英・英日通訳を訓練します。「それ以外」の学生には英語の母語話者もいますが、多く…

本当の翻訳の話をしよう

村上春樹氏と柴田元幸氏の『本当の翻訳の話をしよう』を読みました。雑誌『MONKEY』に掲載された、小説(なかでもアメリカ近現代の)や翻訳に関する対談を収めた一冊です。本のタイトルはティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう 』へのオマージュで…

井上陽水英訳詞集

ロバート・キャンベル氏の『井上陽水英訳詞集』を読みました。書店でたまたま手に取ったのですが、歌詞の原文とその対訳が収められているだけの訳詞集ではなく、翻訳を行う際にキャンベル氏が日本語と英語の間を何度も行き来しながらその言葉の森に分け入っ…

“核心価値”をつかむ通訳訓練

現在複数の学校で通訳のクラスを担当しているのですが、そのうちのひとつは華人留学生が学んでいる専門学校です。この学校の留学生は、ほとんどが日本語学校で日本語を一年から二年ほど学んで入学してくるのですが、通訳訓練を始めてしばらくは、なかなか訳…

公式サイトや研究不正に見る翻訳への無理解

これまで、東京都台東区公式サイトや元SMAPメンバーによるユニット「新しい地図」における、機械翻訳丸投げによる珍妙な中国語や英語をさんざっぱら批判ないし揶揄してきました。こうしたサイトの珍妙な翻訳は、私が奉職している学校の幅広い国や地域の留学…