インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

通訳・翻訳

黒歴史はあまり聞いたことがないって

華人留学生の通訳クラスで、無国籍の問題に取り組まれている陳天璽氏の講演を教材に使いました。【一席】陳天璽:無國籍生存とても分かりやすい中国語ですし、無国籍者としてのご自身の体験も語られており、国民国家とは、国籍とは、難民とは……と、考えさせ…

語学をもっと欲張ればいいのに

日本語を学んでいる、あるいは日本語と英語や中国語との通訳や翻訳を学んでいる留学生から、ときどきこんな相談というか、要求が聞かれます。 学校で教わる日本語はすごく「きっちり」してるけど、日本人の友達とかバイト先の日本人はそんな日本語を話してま…

「この中国語はおかしい」について

通訳訓練では毎学期必ずと言っていいほどあることなのですが、今期も華人留学生から教材の中国語について「この中国語はおかしい。普段の生活でこんなことは言わない」との発言がありました。う〜ん、まあ語学教材はそもそもが架空の設定ですし、とはいえ文…

日本人にとって「ツンデレ」な中国語

私たち日本語母語話者が中国語を学ぶ際には、漢字の存在が手助けにも、またハードルにもなります。でも、かつての私もそうでしたが、中国語初学者の方に「なぜ中国語を学ぼうと思われたんですか?」と伺ってみると、たいがい「漢字を使っているから学びやす…

オリンピックのボランティアと大学連携協定について

参加要件が厳しすぎるとして話題になっていた東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ですが、大会組織委員会が要件を見直したというニュースに接しました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180607/k10011468441000.htmlwww3.nhk.or.jp ※201…

日本人が日本語と外語を行き来することについて

日本で学ぶ留学生が日本の暮らしで一番「心折れる」のは、不自然な日本語に対する日本人(日本語母語話者)の許容度があまりに低いことだそうです。例えばコンビニのバイトで、日本語の発音や統語法が少しでも不自然だと、あからさまに嫌な顔をされたり笑わ…

学校が後押しする「通訳ボランティア」について

先日、TwitterでNHKのこの記事が「東京五輪・パラのボランティア」「やりがい搾取」というキーワードでトレンドに入っていました。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180521/k10011447361000.htmlこの件に関してはこれまでにも発信してきましたが、この期…

暗く小さな声の生徒を前にして

通訳の訓練をしていると、生徒さんの中には、声が暗く、小さく、元気がない方がまま見受けられます。自分の訳出に自信がないので小声になるのだと思われますが、どうもそれだけではないみたい。訳出のたびに「もっと声を大きく、活き活きと、語りかけるよう…

ボランティアに頼る「商売」はおかしいと思います

先日、Twitterのタイムラインにこんなツイートが流れてきました。【 #通訳ボランティア 】英語コミュニケーション能力を発揮して、活躍してみませんか?#TOEIC #ラグビー #ボランティア秩父宮みなとラグビーまつり2018▼詳細はこちら— TOEIC (@TOEIC_japan) 2…

外語や外国とは「健全」につきあいたい

フリーランスライターのふるまいよしこ氏がnoteに寄稿された、翻訳家・天野健太郎氏へのインタビュー、とても興味深く読みました。有料記事ですが、こういう出費は惜しんじゃいけません。note.mu天野健太郎氏の翻訳で私が最初に読んだのは、龍應台氏の『台湾…

“語言天才”の“語言精華”に接して

先日の東京新聞朝刊に、こんな記事が載っていました。“相聲”は中国版漫才と紹介されていますが、二人で演じるものの他に一人や三人以上という場合もあります。いわば「ピン芸」や「スタンダップコメディ」や「コント」などを包括した話芸のひとつですが、芸…

華人留学生の「鬼門」単語攻略のために

新学期が始まったばかりのこの時期、華人留学生の通訳入門クラスではまず人名や地名の「クイックレスポンス」から始めます。クイックレスポンスは、二人ひと組になって、出題側が日本語か中国語の単語を言い、回答側が即座にその訳語を言う訓練です。もし回…

謡本から五線譜への「翻訳」

六月の温習会で舞囃子「清経」の地謡に入ることになっているので、目下、謡を鋭意暗記中です。昨晩のお稽古では、お弟子さんのお一人から「謡本を五線譜にしてみました」と、こんなものを頂きました。おお、謡曲がなんだかドイツリート(歌曲)みたいな雰囲…

しまじまの旅 たびたびの旅 27 ……ムーミンとムラカミ推し

先般、大学入試センター試験で「ムーミン」を扱った問題が話題になっていました。mainichi.jpヘルシンキでは、当然のようにムーミンがそこここで見られました。テレビアニメもムーミン(かつて日本で作られたものではなく、オリジナルのようです)、お土産も…

通訳者や翻訳者の仕事はなくなりますかと問われて

日本経済新聞のサイトで、こんなニュースに接しました。「翻訳機*1ポケトーク」の話題です。すでにYouTubeにも動画が上がっています。youtu.be 通訳学校の春学期を控えたこの時期、公開講座やセミナーの講師で登壇することがあるのですが、そうしたイベント…

「言葉の壁をなくす」のならもっと大きな夢を持とうよ

またまた新聞にAI通訳の記事が載っていました。今度は日本経済新聞、それも一面トップ記事です。 www.nikkei.com「同時通訳システム」という文字に興味津々で読んだのですが、翻訳データ蓄積の話がメインで、深層学習で高次の通訳が可能かについては触れられ…

自動でディクテーションできちゃった

む〜、いつかはそうなるだろうと思っていましたが、ついにこうなりましたか……。いや、昨晩こんな記事を拝見したのです。note.mu先般Google Documentの「OCRっぷり」がすごい、という話題に接していたので、これはもう早晩、音声から直接文字に、つまり“聽寫…

機械的な翻訳で何を発信しようとしているのか

以前Twitterで、このようなツイートを拝見しました。最近、我が街の駅に掲示された多言語表示。またのお越しをお待ちしていますの中国語訳、これでいいのか?初めて見る表現だが。 pic.twitter.com/6WV2CZeIdY— ばび夫 (@babiwo) 2017年11月21日外国人観光客…

「遂次」通訳について

先日、一斉メールで通訳者にオファーを出し、採用者以外には返事を出さないエージェント(通訳者の派遣業者)「X社」の話を書きました。qianchong.hatenablog.com……と、またまた「X社」からオファーのメールが届きました。以前募集した案件の通訳者が足りな…

Et tu, JETRO?

以前、エージェント(通訳者の派遣業者)のウェブサイトにこんな記事を寄稿したことがあります。haken.issjp.com現在、多くのフリーランス通訳者を悩ませていると思われる「仮案件とリリース」についてはこの記事に当たっていただければ幸いですが、エージェ…

日本語教師が外語を学ぶ必要について

人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)は日本語教師の仕事をうばうのか。そんな問いをテーマの一つに掲げた日本語教育関係のセミナーに出席してきました。もとより日本語教師ではない私は少々場違いではあったのですが「日本語教育とAI、ICT」というテーマが…

『英子の森』を読んで身悶える

松田青子氏*1の小説『英子の森』を読みました。 英子の森 (河出文庫)文庫版の帯に、翻訳家の鴻巣友季子氏による解説の一部が惹句として載せられています。 おもしろい。そして怖すぎる。さあ、みなさん、手にとってください、読んでください。「グローバル英…

日本語読みで呼ばれたい?

昨年の8月、東京新聞の投書欄にこのような意見が載りました。確かに、例えば私の苗字である「徳久(とくひさ)」は、英語だと“Mr. Tokuhisa.”と呼ばれる*1のに、中国語では“徳久先生(Déjiǔ xiānsheng)”と「徳久」の漢字が中国語読み(カタカナでは正確に表…

チェックしてもらえばいいのにな

海外へ行くときは、たいがいWi-Fiのルータをレンタルしています。先日台湾へ行ったときも、空港で借りて空港で返せるルータを借りました。台湾では、ホテルやカフェなどでたいがいフリーWi-Fiが使えるので、あまりレンタルする必要もないほどなのですが、街…

オリンピック・パラリンピックの通訳ボランティアについて

1月10日の日本経済新聞に、2020年東京オリンピック・パラリンピックの通訳ボランティアに関する記事が載っていました。通訳を教える大学が進んで通訳ボランティアを斡旋するという動きに違和感を覚えて以下のツイートをしたところ、いろいろな反応が寄せられ…

差異を認めて知ろうとすること

見逃していた正月時代劇の『風雲児たち~蘭学革命篇(らんがくれぼりゅうしへん)~』、NHKオンデマンドに早くも上がっていたのでさっそく視聴しました。 http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017084181SC000/index.html?capid=sns002 みなもと太郎氏の同名…

解らない人には解りはしません

白洲正子氏の『お能・老木の花』を読みました。能を紹介する本は色々と読みましたが、ここまで繊細で、かつ一種の気魄というか情念のようなものを帯びつつ迫ってくる文章は初めてでした。間に挟まれた芸談『梅若実聞書』も実に読み応えがありました。『梅若…

字幕翻訳のレートがあまりにも低い件について

足かけ十年ほど、途中休みをはさみながらも台湾エンターテインメント関係の字幕翻訳を続けてきました。ドラマやバラエティ番組、それにファンの方々が視聴するエンタメニュースなどの字幕を作るお仕事です。毎週しめきりに追われるなかなかタフなお仕事でし…

iPhoneやAndroidは機械通訳の夢を見せるか

「言語の壁は崩壊寸前」という、興味深い記事を読みました。こういう話題に接すると、商売柄すぐに「食えなくなるかも」といったナマな思考回路が働くのですが、そこをいったん離れてもっと大きな空想をしてみたいと思いました。jp.wsj.com三年ほど前に「自…

私たちのナイーブな言語観について

台湾の総統(大統領)選挙と立法院(国会)議員選挙が行われ、民進党の蔡英文氏が大統領に当選、立法院でも民進党が議席の過半数を占めるという「完全勝利」で幕を閉じました。一昨年、「反服貿」の「ひまわり学運」が立法院占拠という形に発展した際、日本…