インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

通訳・翻訳

解らない人には解りはしません

白洲正子氏の『お能・老木の花』を読みました。能を紹介する本は色々と読みましたが、ここまで繊細で、かつ一種の気魄というか情念のようなものを帯びつつ迫ってくる文章は初めてでした。間に挟まれた芸談『梅若実聞書』も実に読み応えがありました。『梅若…

字幕翻訳のレートがあまりにも低い件について

足かけ十年ほど、途中休みをはさみながらも台湾エンターテインメント関係の字幕翻訳を続けてきました。ドラマやバラエティ番組、それにファンの方々が視聴するエンタメニュースなどの字幕を作るお仕事です。毎週しめきりに追われるなかなかタフなお仕事でし…

iPhoneやAndroidは機械通訳の夢を見せるか

「言語の壁は崩壊寸前」という、興味深い記事を読みました。こういう話題に接すると、商売柄すぐに「食えなくなるかも」といったナマな思考回路が働くのですが、そこをいったん離れてもっと大きな空想をしてみたいと思いました。jp.wsj.com三年ほど前に「自…

私たちのナイーブな言語観について

台湾の総統(大統領)選挙と立法院(国会)議員選挙が行われ、民進党の蔡英文氏が大統領に当選、立法院でも民進党が議席の過半数を占めるという「完全勝利」で幕を閉じました。一昨年、「反服貿」の「ひまわり学運」が立法院占拠という形に発展した際、日本…

何に旅情を感じるかについて

先日台湾へ出張した際、ホテルで朝食券をもらったんですが遠慮して、近くの「早餐店」に出かけました。このホテルには前にも泊まったことがあって、朝食はバイキング形式で豪華でもあるんですけど、なにかこう「いまひとつ」なんですよね。特に「台灣特色」…

通訳者の「向き不向き」

先日仕事の現場で、十数年ぶりの懐かしい方に再会しました。某企業のインハウス(社内)通訳者として働いていた頃ご一緒したことのある、他の企業のエンジニアさんです。当時を振り返って、こんなことを言われました。 門外漢だけど、ずっと同じ現場で同じ技…

オリジネイターに対する敬意

先週と先々週、通訳スクールの教材にこの映像を使ってみました。魅蓝note2发布会全程视频- YouTube中国のスマホメーカー魅族(メイズ)の新製品「魅藍note2」の発表イベントです。6月2日に開催されたばかりの映像がもうYouTubeに公開されていて、それを早速…

仮案件とリリース

先日、Twitterでこんなことをつぶやきました。とある通訳業務の「仮案件1」がリリースになったその日に、別の「仮案件2」が入っている日時とバッティングする形で「仮案件3」が入り泣く泣く断りましたが、この「仮案件2」だってリリースになるかもしれず…

通訳の道具1・バング&オルフセンのイヤホン

通訳の現場は毎回緊張の連続。しかもそれが、一緒にチームを組んで仕事をする「パートナー」のいる現場であればなおさらです。まだまだ駆け出しの私にとって、現場でご一緒するパートナーはいずれもこの業界の大先輩ばかりだからです。先輩通訳者のパフォー…

新聞を読みましょう

通訳学校で、春学期の授業が始まりました。半年間の訓練の最初に行うガイダンスで、いつも「一般常識テスト」を行っています。と言ってもたいしたものではなく、日本と中国語圏の時事や教養に関する語彙について、口頭で簡単に説明してもらうだけです。今春…

ドストエフスキーと愛に生きる

八十四歳の翻訳家、スヴェトラーナ・ガイヤーさんの半生を追ったドキュメンタリー映画です。翻訳者が主人公の映画というのもめずらしい。というわけで昨日、渋谷のアップリンクで観てまいりました。http://www.uplink.co.jp/movie/2013/20712 http://www.upl…

通訳者は「ひとりだけ門外漢」なのでぜひとも資料をいただきたいです

先々週から今週にかけて、通訳の仕事で少々忙しくしていました。といっても外に出かけるのは間欠泉的にであって、多くの時間を在宅ワークに充てているので、うちのお義父さんなんかは「あいつは全然働かねえな」と思っているかもしれません。 だいたい、通訳…

二つの対照的な対談

土曜日の午後、二つの対談イベントを「はしご」してきました。期せずしてとても対照的な対談でした。一つは、ピーター・バラカン氏と佐々木俊尚氏の対談です。池袋の東京芸術劇場で開催されている『Moving Distance:2579枚の写真と11通の手紙』というジャン…

「母語なんてちょろい」のか

先日のエントリで、「語学なんて『ちょろい』でしょ」という信憑について書きましたが、Twitterでは台湾の方からこんなリプライをいただきました。@QianChong 本当に不思議です。 日本の殆どの方が英語を学ぶのに苦労してきたり、外国語はなかなかマスター出…

通訳は「ちょろい」職業か

春節休暇(今年の春節は1月31日)のためか、都心に出ると観光客とおぼしきチャイニーズのみなさんを多く見かけます。日本の洗練されたところも、そうでないところも見て行ってほしいですね。本来の姿をありのままに体験してもらうだけで十分「おもてなし」に…

通訳者の社会的地位

昨日は通訳スクールのセミナー&公開講座でした。珍しく男性が二名も参加されていました。普段はゼロか、いてもお一人のみという回が多いです。他の言語は分かりませんが、こと中国語通訳に限って言えば、圧倒的に女性が活躍している業界です。実際に開講し…

ちょっとちょっと、大丈夫かいな

日経ビジネスオンラインの記事が面白くて、毎日メールでダイジェストが配信されるたび、ご本家のサイトに行って読んでいます。ホントはさらにご本家の雑誌を買ってあげればいいんだけどね。 で、今日は『日経ビジネス』編集長の巻頭言がメールに載っていたの…

翻訳川柳

ツイッターで昨日始まった「翻訳川柳」。私もおもしろ半分で参加していたのですが、かなりの盛り上がりを見せました。トゥギャッターにもまとめられています。 http://togetter.com/li/60921 最初は「翻訳」川柳ということで、私も「通訳」ネタは控えていた…

通訳スクール

昨日は今期の最終授業日でした。訓練の総集編として、実際に講演者をお招きしてしゃべってもらい、それを生徒が同時通訳・逐次通訳するというもの。まさに本番さながらで、みなさん緊張したと思います。 が、本番に強いタイプの人っているんですよね。普段の…

はとバスツアー

先日、通訳スクールの生徒さんたちと一緒に、はとバスの中国語ツアーに参加してきました。浜松町のバスターミナルから、皇居前広場、浅草という半日だけのごくごく短いコースです。 本来は中国や台湾からの観光客が利用するツアーなんですけど、通訳ガイドさ…

CG通訳

朝何気なくテレビのニュースを見ていたら、画面の右下にCGの手話通訳が現れました。これ、ニュース原稿から自動作成しているんでしょうか。それとも音声から直接? 「伝達の度合い」がいかほどのものなのか確かめるすべもありませんけど、なんだかすごいな中…

通訳スクール

またまた春学期が始まりました。 最初の授業には、いつも簡単な単語テストをしています。中国や台湾に関する、新旧取り混ぜた単語の意味を問うものです。中国語圏で、中国語を使って仕事をするなら、日頃から人一倍この方面のニュースや情報に敏感になってい…

終了

二年半の間担当してきた某華流エンタテインメント系テレビ番組の字幕仕事が、今年度、つまり三月いっぱいで終了することになりました。 この四月からは番組の編成が大幅に変わって、字幕も制作会社内でよりスピーディに対応していきたいからとのこと。もとも…

古びた感じ

金原瑞人さんの『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』を読んでいたら、若い人は「市松模様」という言葉を知らないだろうと書いてあって、「へえ」と思いました。「碁盤の目」も使わなくなった、とおっしゃっています。 そうかですか、使いませんか。…

中日通検が突然中止

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081108-00000020-mai-soci 何だか八王子の自動車教習所を彷彿とさせるようなニュースですが。 「通訳協会」の声明はこちら。 http://www.jipta.net/cgi-bin/cj/news/cf.cgi?mode=all&namber=1192&rev=0 内部事情に詳し…

今は通訳の訓練ですから

中国人留学生向けの中日通訳クラス、最近はやや長めの逐次通訳に取り組んでいるので、あわせてメモの取り方についてもレクチャーしています。 ところがある生徒は、原発言を聞いている間ちっともメモを取ろうとしません。当ててみると、案の定情報が大きく抜…

サービス業ですからね

私の勤務校には中国人留学生がいて、私は中日通訳クラスを担当しています。今日は映画監督へのインタビュー音声を使って、逐次通訳の練習をしていました。 ある生徒の訳出で、俳優の名前が入る時に敬称も敬語もつかわず、ずいぶん居丈高な印象に聞こえてしま…

はいりきらない

某バラエティ番組の字幕翻訳、先月末からクールが変わって内容がリニューアルし、同時にすべてSSTでの納品に切り替わりました。 高額なSSTの購入費用が少しでも回収できると喜んではいますが、やはりこれまでより仕事量がぐんと増えますね。なにせ翻訳者がハ…

うわあ

いささか古い話になるけれど、先般福田首相が訪中した際、通訳者の「誤訳」がニュースになった。 「誤訳」で福田首相の顔色一変 日中首脳会談 12月29日11時26分配信 産経新聞 北京の人民大会堂で28日行われた福田康夫首相と温家宝中国首相の首脳会談。直後の…

憂い顔の「星の王子さま」―続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ

『聖書』、『資本論』につぐベストセラー本と言われるサン=テグジュペリの『星の王子さま』。半世紀にわたる独占的出版権が切れた二〇〇五年以降次々に新訳が出版されたが、この本はそれら新訳版と、もとの内藤濯による訳本を俎上にのせ、翻訳の不備を細か…