インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

能楽

能や狂言に関する記事です。

「舞」と「筋トレ」の共通点

先日ジムで体幹トレーニングをしていたら、トレーナーさんに「ずいぶん体幹がしっかりしてきましたね」と言われました。例えば「ダイアゴナル」と呼ばれる片方互い違いの手足(例えば右手と左足)をそれぞれ伸ばしたり縮めたりする動きなど、確かに以前はか…

トリですよ

能のお稽古をしている人たちが年に一回か二回ほど発表会を行うことがあります。「素人会」とか「温習会」などとも言われるこの発表会は、玄人の能楽師と同じように能舞台に立てる機会なので、愛好者にとってはとても楽しみでありかつ緊張する時間です。素人…

再現性と個性

こちらのインタビュー記事、とても興味深く、また共感を持って読みました。能楽喜多流の能楽師、高林白牛口二(たかばやしこうじ)氏に取材した記事です。www.sbbit.jp 再現性について 共感を持ったのは例えば、AIやロボットの技術で優れた技芸を保存したり…

最前列に座るのが好き

語学の講座やセミナーなどで講師を担当しているとよく分かるんですけど、最前列に座ってらっしゃる方ほど熱心で、飲み込みがはやく、こちらの印象にも残ります(ときに最前列で爆睡、という方もいますが)。逆に前方の真ん中だけ「ぽかっ」と空いていること…

能「道成寺」と唐詩「楓橋夜泊」

私はいまのところ中国語業界の末端に連なっているので、初対面の方に「日本の伝統芸能である能楽(能と狂言)が好きです」と申し上げると、ときおり「へええ、中国の芸能じゃなくて? またどうして?」というような反応をいただくことがあります。先日も某所…

「能面のような」という形容をなんとかしたい

世上よく「顔に生気がなく表情が冷たいさま」を「能面のような」と形容されることが多いのですが、能楽ファンとしては少々納得がいきません。とはいえ、私も初めて能を見たときは、正直に申し上げて無表情に見えました。いや、見えたどころか熟睡しちゃった…

楽をしようとすると鍛えられない

NHK大阪放送局が制作した「かんさい元気印『まだ間に合う筋肉体操』」という番組を見つけました。昨年話題になっていた「みんなで筋肉体操」の中高年版とのことです。これ、関西地方だけでしか放映されていないのかなあ。 www.nhk.or.jpこちらの動画では、中…

留学生と小謡

留学生の通訳クラスで「通訳実践トレーニング」という科目がありまして、私が担当しています。「通訳実践」だから現場に出てどんどん通訳をする……のではなく、通訳を実践するために必要なさまざまな基礎的トレーニングを行うという科目です。だからほんとう…

ZOZOの社長にぜひ能面を買っていただきたいです

先般、ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOの社長、前澤友作氏が1717年製ストラディヴァリウスのバイオリン「Hamma(ハンマ)」を購入したというニュースが流れていました。www.huffingtonpost.jp購入金額は明らかにされてい…

「邯鄲」の楽におけるドラマツルギー

中国の河北省に邯鄲(かんたん)という都市があります。秦の始皇帝の生まれた場所としても有名ですが、日本ではなんと言っても「邯鄲の夢(邯鄲の枕)」の故事でよく知られている街です。私は昔一度だけ「ほとんど通過」したことがありますが、それほど際立…

弓と禅

T.H.カーハート氏の『パリ左岸のピアノ工房』で、「わたし」がピアノの先生であるアンナから一冊の本をもらう場面があります。 ある日、ベヒシュタインの譜面台にひろげた楽譜を集めていると、アンナがわたしにちょっとした贈り物があると言った。音楽に対す…

キャッシュレス化をとっとと進めてほしい

一昨日の東京新聞朝刊、電子マネーで給与支払いができるようにする規制緩和は、外国人労働者の受け入れがその背景にあるのでは、という記事。なるほど。でも「給料日にお金をおろそうと銀行で行列せずに済」む以外に利点が思い付かないというのは、ん~、ど…

肩の力の抜けぐあい

長塚京三氏へのインタビュー記事、ほかにもいくつか心に残った部分があるので追記します。www.chunichi.co.jp 台本は、ぱらっと、大体前日にファクスでいただきます。それをそんなにあっためるということはなくてね。現場のスタジオにさらりと行って、ぼつぼ…

雑然とした雰囲気の中での劇的な訴求力

昨日、大宮公園へ「薪能」を見に行ってきました。埼玉県主催のイベント「埼玉 WABI SABI 大祭典2018」で能楽喜多流の「船弁慶」が上演されるというので、お誘いを頂いたのです。毎年新春に開催されている「はじめて観る方のためのやさしいお能」がコンセプト…

分別のある年寄りになりたい

能楽堂の客席は、正方形の舞台を左側から正面に向けて取り囲むようにL字型に配されており、正面側の席が値段もお高くなっています。先日は少々奮発して真正面の席を取っておいたのですが、前の席にとても大柄な男性が座り、舞台がほとんど見えませんでした〜…

母音の発声について

先日、謡のお稽古をしている際、師匠から「音程が上がったときの母音、特に『あ』の段が汚くなるので気をつけてください」と言われました。「以前よりもずいぶんきれいになりましたが、もう少し『引いて』丁寧に。でも声を小さくするわけではないですよ」と…

京劇の「覇王別姫」と能の「項羽」

「覇王別姫(はおうべっき)」といえば、陳凱歌監督の映画「覇王別姫 さらば、わが愛」でも有名な京劇の演目です。楚の項羽と漢の劉邦が戦い、最後は項羽が追い詰められて虞姫(虞美人)と愛馬・騅と別れる……という悲劇。「四面楚歌」という成語の元になった…

滔々と流れる大河のような「楽」

能のお稽古は「楽(がく)」の練習に入りました。いつもお世話になっている「the能ドットコム」の「能楽用語事典」によりますと、楽とは…… がく 舞の種類のひとつ。舞楽をまなんだ舞といわれ、「鶴亀」「邯鄲」「天鼓」「富士太鼓」など唐土にゆかりのある役…

日本人にとって「ツンデレ」な中国語

私たち日本語母語話者が中国語を学ぶ際には、漢字の存在が手助けにも、またハードルにもなります。でも、かつての私もそうでしたが、中国語初学者の方に「なぜ中国語を学ぼうと思われたんですか?」と伺ってみると、「漢字を使っているから学びやすそうだと…

小学二年生に圧倒されました

先日のお能の「温習会」、番組の一番最初は男性参加者による連吟「猩々」でした。お師匠がFacebookに写真を投稿されていましたが、ずらっと並んだ紋服姿のおじさんたちの前に、かわいい少年が一人座っているのがお分かりでしょうか。 この少年は小学校二年生…

お能の稽古における一見相反するような指示

昨日は能の温習会の「申し合わせ」でした。「申し合わせ」については、the能.comの「能楽用語辞典」に簡にして要を得た解説が載っています。 能・狂言の「リハーサル」のこと。通常、上演当日の数日前に諸役が集まり、当日と同様の流れで行われる。面や装束…

お能の温習会

趣味でお稽古をしている「お能」ですが、今年も年に一度の温習会(発表会)が迫ってきました。年に一度ですからそれなりに気合いも入ってはいるのですが、なにせ仕事や家事に追われる毎日で、ろくに自宅で稽古もできません。まあ時間があったってそんなに大…

能楽の「素人会」プログラムをご紹介します

能楽堂に行くと、ロビーなどに様々な能や狂言などの公演のチラシとともに、「〇〇会」などと書かれた薄い小冊子状のものが置かれていることがあります。これは能楽のお稽古をしている一般の方々が定期的に行う発表会・温習会、あるいは「素人会(しろうとか…

謡本から五線譜への「翻訳」

六月の温習会で舞囃子「清経」の地謡に入ることになっているので、目下、謡を鋭意暗記中です。昨晩のお稽古では、お弟子さんのお一人から「謡本を五線譜にしてみました」と、こんなものを頂きました。おお、謡曲がなんだかドイツリート(歌曲)みたいな雰囲…

塩津哲生師の神舞

先日見に行ってきた「若者能」の番組(プログラム)でもう一つ、どう言語化してよいかわからず、エントリに載せなかったものがあります。塩津哲生師の舞囃子『高砂』です。だって「すごい」としか言えないんだもの。「すごいものはすごい」のだから「すごい…

若者能

「若者能」を見にいってきました。wakamononoh.jp能楽喜多流シテ方の塩津圭介師が中心となって、学生さんや社会人が実行委員会形式で毎年行っている能楽入門的なイベントです。入門編とはいえ、番組(プログラム)は解説に始まって舞囃子、狂言、能と盛りだ…

解らない人には解りはしません

白洲正子氏の『お能・老木の花』を読みました。能を紹介する本は色々と読みましたが、ここまで繊細で、かつ一種の気魄というか情念のようなものを帯びつつ迫ってくる文章は初めてでした。間に挟まれた芸談『梅若実聞書』も実に読み応えがありました。『梅若…

なぜ稽古をするのか

夏の研修会に参加して来ました。内輪で行う発表会みたいなものです。私が舞ったのは「猩々」の舞囃子。その他に仕舞と舞囃子の地謡をいくつか仰せつかりました。「羽衣」「三輪」「竹生島」「半蔀」「飛鳥川」。謡はiPodの再生回数がそれぞれ100を超えるほど…

「エロ」くて「オヤジギャグ」な古典

夏の「研修会」でいくつか仕舞の地謡を仰せつかったので、謡をせっせと覚えています。iPodに入れた謡をエンドレスで聞きながら詞章や拍子や節を身体に覚え込ませるんですけど、基本は学生時代に最も苦手としていた「古文」の世界ですから、なかなか身体に入…

能と「互動」

先週末の能楽堂でのお稽古会(発表会)も終わり、暮らしも仕事も通常モードに戻りました。今回は連吟で「敦盛」「紅葉狩」「枕慈童」を謡い、初の舞囃子で「賀茂」を舞いました。終わってみれば「まだまだ」とため息ばかりの結果ですが、まあ何とか間違えず…