インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほん

効率のよい語学学習?

通勤途中の書店で偶然見つけた、奈倉有里氏の『ことばの白地図を歩く』を読んでいたら、「妖怪あきらめ」という「語学学習にひそむ強敵」が出てきました。 でたぞ、語学学習にひそむ強敵、妖怪あきらめ。こいつのやっかいなところは、意外にも「なんのために…

移動図書館

けさの新聞に、東京都町田市の移動図書館「そよかぜ号」の話題が載っていました。ああ、まだ活躍していたんですね、移動図書館。私が子どもの頃に住んでいた団地の集会所にも、この写真そっくりな移動図書館が定期的にやってきていて、毎回楽しみにしていた…

すべてをゆるそう

自分の心と身体がそれまでとは違う状態に入ったのだなと如実に感じられるようになったのはここ5、6年のことでしょうか。現実の厳しさに比べてやや軽薄な感じがする言葉ですけど、まさに「老いのリアル」みたいなものがひしひしと迫ってくるのを、なかば驚…

マウントフルな人生

「マウントおじさん」という言葉があります。あるいは「マウンティングおじさん」とも言うでしょうか。自分が他人よりも優れていることを見せつけようとする男性のことを指し、とくに、自分の経験や知識や能力などを誇示して、相手を見下ろそうとする行動を…

日の名残り

およそ20年ぶりくらいで、カズオ・イシグロ氏の『日の名残り』を読み返しました。私は2001年発行のハヤカワepi文庫版を持っていて、かつて読んだときにとても感動したことだけは覚えていました。でも今回、ふと書棚から手にとって読みだしたら、おおまかなプ…

大肚腩

旅行における楽しみは人それぞれだと思いますが、私の場合は食べ歩きです。いえ「でした」と言うべきでしょうか。年を取って、若いときのように片っ端からおいしいもの、めずらしいものを食べてまわるということができなくなりました。ほんの少し食べただけ…

洪通

その絵から、かのヴォイニッチ手稿を連想しました。臺南市美術館2館で展示されていた洪通(Hung Tung)氏の作品を見たときです。たまたま立ち寄ったこの美術館では、ちょうど台南にゆかりのある画家の展覧会が行われていて、紹介されている4人のうちのおひ…

あたらしい家中華

極端な人見知りで人づきあいが苦手な私ですが、曲がりなりにも数十年ほど中国語関係のお仕事をしてくるなかで、中国人のお宅に招かれて食事をふるまわれたことが何度かあります。数十年で何度かしかないというのが社交性のなさを如実に表していますが、それ…

失敗の科学

先日の新聞に気になる記事が載っていました。1月2日に羽田空港で起きた飛行機の衝突事故に関して「調査による原因究明と捜査による責任追及が並行して進」んでいることに疑問を呈した記事です。大きな事故が起こると、日本ではその原因究明が行われる一方…

40歳がくる!

先日、仕事帰りに本屋さんへ立ち寄って新刊本をあれこれ立ち読みしていたら、真っ赤な表紙の目立つ本が平積みされているのに気づきました。書名は『40歳がくる!』で、アラフォーを迎える方のエッセイかな、自分も40歳を迎えたころは「不惑」と言いつつあれ…

子どもが「タブルリミテッド」になる心配はない?

偶然立ち寄った書店でこの本を見つけました。ビオリカ・マリアン氏の『言語の力』です。副題には「『思考・価値観・感情』なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?」とあります。これはおもしろそう! そして実際、とてもおもしろく刺激的な一冊でした。こ…

十二世紀ルネサンス

伊東俊太郎氏の『十二世紀ルネサンス』を読みました。この書名を見て、疑問を覚える方もいるかもしれません。ルネサンスといえば14世紀から16世紀の文化運動じゃないの、ギリシアやローマの文化を復興しようということで、ダ・ヴィンチとかミケランジェロと…

米原万里氏のことば

年末、北九州市の実家に帰省して、年末のうちに東京へ戻ってきました。せっかく帰省したんだから家族や親戚とゆっくり年越しすればいいのにと友人には言われます。でも、高齢の親にとっては逆に負担になりますし、私も年末年始のラッシュに巻き込まれるのは…

ネイティブにはなれない

ことしのお正月にオンライン英会話をはじめて、もうすぐ1年になります。1年と言ったって、基本的に30分のレッスンを週3回ですから、学習時間としてはたいしたことはありません。オンライン英会話以外にスマートフォンのアプリで学んだり、問題集に取り組…

AIで人はバカになる?

ChatGPTが世に公開される前の時代ですが、「コンピュータを使うと人は衰える」という記事を読んだことがあります。project.nikkeibp.co.jpいや、たしかに、パソコンやスマートフォンを使い始めてからというもの、漢字の「ど忘れ」や家族の電話番号さえ知らな…

体育がきらい

語学と演劇 私が奉職している語学学校では、通訳訓練に演劇を取り入れています。年に一度だけですが、秋の文化祭に向けて二ヶ月間ほど「語劇」の練習を行い、一般のお客様も含めた多くの観客に見てもらうというものです。「語劇(ごげき)」というのは聞き慣…

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがミサイル攻撃を行い、その報復としてイスラエル軍がガザ地区への軍事作戦を開始したのが10月7日。あれからちょうど1ヶ月、悲惨な戦争の報道に接し続けてほんとうに胸ふたぐ思いの日々が続いています…

シンクロニシティ

ふだん通勤列車のなかでは語学のアプリに取り組んでいるのですが、仕事であまりに疲れた日などはそこまで学習意欲がわかないこともあり、そんなときはよくYouTube動画を見ています。先日はたまたまアプリを開いて一番最初に出てきたこのショート動画を見まし…

好ハオ

職場の図書館で雑誌をあれこれ読んでいたところ、書棚にあるファッション雑誌に目が止まりました。表紙に「圧倒的に好ハオいモノだけ」という特集名が大書された『S Cawaii!』という雑誌です(2023年11月号)。 S Cawaii! 2023年11月号おおお、中国語の “好…

HHhH

2014年の本屋大賞翻訳小説部門で第1位となり、その後『ナチス第三の男』の邦題で映画化もされたローラン・ビネ氏(翻訳は高橋啓氏)の『HHhH プラハ、1942年』を遅ればせながら読みました。このところロシアとウクライナの戦争に関する書籍や双方の歴史に関…

宝くじという寄付

日本人は世界でいちばんケチな民族。そう言われたら「ムカッ」とくるでしょうか。でも実際のところ、例えばこちらのページによれば、人口ひとりあたりの寄付金額で日本は英国の2分の1、米国の10分の1しかないそうです。www.es-inc.jpまた英国の Charities…

語学における近道

マーカス・デュ・ソートイ氏の『数学が見つける近道』を読みました。ソートイ氏といえば同じ新潮クレスト・ブックスから出ている『素数の音楽』が大好きな一冊なのですが、この本も同様の知的好奇心を刺激される、とても面白い内容でした。 数学が見つける近…

自分を護るために降りる

私が勤務している職場の図書館には、処分されることになった蔵書を並べて、学生や教職員が自由に持ち帰ってよいというサービス(?)を提供するコーナーがあります。私はかつてここで飯塚朗氏の『中国故事』(角川選書)や木下順二氏の『中野好夫集』(日本…

ミッキーハウス

台湾滞在中にテレビニュースを見ていたら、しきりに“米奇屋”の話題を報道していました。“米奇”はミッキーマウスの「ミッキー」、“屋”は建物とか家のことですから「ミッキーの家」ということですが、要するにこれは日本語で言うところの「ゴミ屋敷」なんであ…

しまじまの旅 たびたびの旅 121 ……荒天、疲労レス、読書

沖縄に来てから今日でまるまる一週間、その間ずっと荒天が続いています。そのうち半分以上は暴風雨で、なおかつその半分以上は停電と断水の中で過ごしました。いったいこれはなんの罰ゲームなのというレベルですが、天気に文句を言ってもしかたがありません…

ウクライナ情勢についての三冊

ウクライナ情勢についての新書を三冊、先週末にまとめて読みました。①手嶋龍一氏と佐藤優氏の『ウクライナ戦争の嘘』と、②エマニュエル・トッド氏と池上彰氏の『問題はロシアより、むしろアメリカだ』、それに③舛添要一氏の『プーチンの復習と第三次世界大戦…

思い出の残骸

私が初めて中国へ行ったのは、たしか1992年か93年頃だったと思います。当時私は熊本県の水俣市に住んでいて、主に水俣病に関する資料館の広報誌を編集する仕事をしていました。その仕事のつながりで、福岡の印刷業者さんとやり取りをしているうち、福博綜合…

プーチン(上巻)

作家で元外務省ロシア担当主任分析官の佐藤優氏をして「古き良きBBCの、またイギリスのインテリジェンス文化が生きている。自らに不利な事柄であっても、あるいは不愉快な出来事であっても、プーチンの内在的論理を掴むというアプローチをきちんとしている」…

日本語が消滅する

山口仲美氏の『日本語が消滅する』を読みました。少々煽り気味とも受け取られそうなタイトルですが、少子化で人口減少フェーズに入ったこと、世界でも十指に入る「巨大言語」とはいえそれがほぼ日本列島でのみ使われていること、これまでにも様々な理由で言…

よもぎ大福の敷き紙が愛おしい

ジムでトレーニングをしたあと、よくコンビニに寄って和菓子をひとつ買っています。筋トレ後に糖質を補給するといいですよとトレーナーさんにアドバイスされているからですが、それよりなにより、トレーニング後の甘味がこたえられないほどおいしいからです…