インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ほん

『82年生まれ、キム・ジヨン』が問いかけるもの

東京医科大学の入試不正、とりわけ女性や浪人生への差別的な扱いがほかの大学でも行われていたのではないかという疑惑が広がっていますが、昨日は順天堂大学が謝罪会見を行っていました。www.nikkei.com「入学時点では女子の方がコミュニケーション能力が高…

異形の神たちにひかれる

Charles Frégerという方の『Wilder Mann』という写真集がありまして、これはヨーロッパ各地の祭りに伝わる「異形」の仮装姿を集めたものなんですが、その土俗的な意匠の美しさに思わず引き込まれます。 WILDER MANN (ワイルドマン)こちらにはCharles Fréger…

天野健太郎さんのこと

先日、翻訳家・天野健太郎氏の訃報に接しました。訃報はいつも突然のことですから今回も驚きましたが、今回の驚きはいつも以上でした。それは天野氏がまだ47歳という若さだったこと、そして直接お目にかかったことはないけれど、亡くなる直前まで精力的に翻…

「きちんと椅子を戻さない問題」をめぐって

うちの学校に「CALL(コール)教室」というのがあります。LL教室としての機能のほか、生徒ひとりひとりの机にパソコンが備えてあって、主に通訳訓練に使う教室なんですが、この教室で行う授業の最後に、いつも留学生のみなさんに言っていることがあります。 …

名刺は単なるツール?

先日Twitterで見かけて、思わず笑ってしまったこちらのツイート。親が「若い社員が名刺の交換方法も知らない」つってて紙の交換に方法もクソもないだろと思ってたら本当に決まり事があるっぽい茶の湯かよ pic.twitter.com/nTxdaXGdhJ— 看護メン (@nursemens4…

弓と禅

T.H.カーハート氏の『パリ左岸のピアノ工房』で、「わたし」がピアノの先生であるアンナから一冊の本をもらう場面があります。 ある日、ベヒシュタインの譜面台にひろげた楽譜を集めていると、アンナがわたしにちょっとした贈り物があると言った。音楽に対す…

パリ左岸のピアノ工房

小学生の頃、ピアノを習っていました。関西地方にかつてよく見られた棟割長屋のような「文化住宅」の一室が教室で、先生はその部屋でピアノだけでなくなぜか書道(毛筆と硬筆)も教えている、かなり年配のご婦人でした。練習の順番を待つ部屋にはマンガ雑誌…

運命 文在寅自伝

むかしむかし、中国の大学に留学していた頃、寮のルームメイトは韓国人の青年でした。とても真面目で親切な方で、年上の私を気遣って接してくれる*1ものですからこちらが恐縮してしまうほどでした。その縁で同じ留学生寮に住む別の韓国人留学生の部屋に遊び…

通訳や翻訳が好きですか?

先日、某所で英語の通訳者さんとお話をしていて、ふと先日読んだトム・ハンクス氏の短編小説集『変わったタイプ』の話題になりました。qianchong.hatenablog.comそこから、「実は私、カズオ・イシグロ氏の作品が好きなんですけど」 「私も!」 「どの作品が…

多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。

本を探している時にたまたま目にして、ネコのイラストにひかれて思わず買い、Kindleで一気に読んじゃった一冊。独特の書名ですが、これはかつて筆者のJam氏が友人から受けた一言だそうです。人間関係に悩んで、いつまでもそれを引きずって悶々としていたら、…

太平洋戦争 日本語諜報戦

武田珂代子氏の『太平洋戦争 日本語諜報戦』を読みました。本のタイトル、それに副題の「言語官の活躍と試練」からして興味をそそられます。 太平洋戦争 日本語諜報戦 (ちくま新書)アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダそれぞれの国において、各国が…

変わったタイプ

むかしむかし、タイプライターを持っていました。イタリアのオリベッティというメーカーの「Lettera32(レッテラ32)」という緑色の一台です。正確にいうと、かつて仕事で使っていた叔母に借りたものでした。「もう使わなくなっちゃったから」というわけで借…

「運動音痴」にこそ筋トレ

先日、いつも通っているジムでベンチプレスをやっていて、42.5kgを12回×3セット挙げることができました。周りでトレーニングしてらっしゃるアスリートの方々からすれば取るに足らないような重量ですが(そして、そもそも人と競うようなものでもないのですが…

『サピエンス全史』を読んで

壮大な物語でした。遅ればせながら読んだユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』上下巻です。宇宙の物理的現象の誕生から筆を起こして現在まで、さらには未来までをも見据えつつ「ホモサピエンス(人類)」の来し方行く末を論じた大著。生物学的な知…

『東京カレンダー』の妄想物語が興味深い

ここ十年ほど、同じ美容室で髪を切ってもらっています。「いっちょまえ」に美容室(しかも表参道!)に通っているのは、単にいつもお願いしているスタッフさんがすごく上手で、なおかつ何の説明もせずに切ってもらえるからラク、という理由なんですけど、お…

中国人のたくましいところに学ぶ

昨日Twitterで拝見した、こちらのツイート。上海の路地にいる裾上げ専門のミシン屋に、腕が良いから素材とデザイン画渡して価格決めてバッグ作ってもらったり、エアコン清掃に来た業者が仕事丁寧だから個人間で報酬上乗せして換気扇清掃もお願いした。私の思…

繊細でこまやかで美しい中国にひかれた

以前、日本で中国語を教えながら事業もなさっている中国の方とお話しする機会がありました。北京出身のその方は「北京があまりにも急速に変わるので、正直に言って悲しい。私の北京はどこに行ったの? という感じ」とおっしゃっていました。ちょうど吉川幸次…

お店のご主人の「指導」がやるせない

先日、私の誕生日祝いということで、細君と二人で地元のお寿司屋さんに行きました。銀座とか青山とか、そういうところのお寿司屋さんではないので気さくな雰囲気ですが、それでもお値段は我々にとってはなかなかにインパクトがある、まあどちらかと言えば高…

最先端の知見が日本語で読める幸せ

吉川浩満氏の『理不尽な進化』と『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』を続けて読みました。日経ビジネスオンラインの、小田嶋隆氏のコラムで取り上げられていたのに興味を持ってすぐに購入したのですが、どちらも超絶的な面白さ。私などが言うのも僭…

白い犬の会社に一本取られました

私は長年ソフトバンクの携帯電話を使っているのですが、先日ふとMy SoftBankの支払明細を確認したら、私と細君の基本料や通話料・通信量、機種代金(分割支払金)の他に、見覚えのない電話番号で機種代金がスマホ月々1500円程度引き落とされているのに気づき…

東京五輪のボランティアは「人生最高の二週間」か「やりがい搾取」か

『ブラックボランティア』の本間龍氏と『東京オリンピックのボランティアになりたい人が読む本』の西川千春氏が対談という、ある意味奇跡的な(?)イベントに参加してきました。場所は下北沢の「本屋B&B」という、書店とイベントスペースを兼ねたような店舗…

ペリリュー

都内の書店に立ち寄った際、偶然見つけた武田一義氏のマンガ『ペリリュー』を読みました。第5巻まで出版されており、現在も雑誌での連載が進行中の作品です。既に二年前から連載が始まり「日本漫画家協会賞」も受賞して話題になっていたというこの作品、今…

ポルトガルのワイン飲み比べ

ポルトガルのワインと料理を楽しみながら、彼の地の食文化を知るという集いに参加してきました。編集者・ライターで「ポルトガル食堂」を主宰されている馬田草織氏とIDÉE SHOP共催のイベントです。イベリア半島の西側、南北に細長く伸びる国土のポルトガルは…

働かざる者たち

端的に言ってこの習慣をやめたら「バカになっちゃう」ような気がして、いまだに紙の新聞を講読して毎朝隅々まで目を通しています。記事を読むだけならネット版の方が手軽で便利(大判の紙の新聞はスペースを取るので、例えば朝食を食べながら読むとか、混み…

笑顔訓練の必要

国や地域、年齢、性別やジェンダーを問わず、笑顔が魅力的な方に出会うことがあります。そんな方に接すると、こちらの気持ちまでほぐれていくのがよく分かります。「笑顔が魅力的」だなんて当たり前すぎるくらいの陳腐な形容ですが、なかなかどうして、これ…

しまじまの旅 たびたびの旅 81 ……京都の春巻と大阪のカレー

小学生の頃、京都市と大阪市のちょうど中間あたりにある枚方(ひらかた)市に住んでいました。家族で出かけることが大好きだった両親は京都・大阪・奈良の様々な場所に連れて行ってくれたのですが、子供だったせいか、神社仏閣はさておき、あちこちで食べた…

踏みとどまって引き返す

節酒つながりで、小田嶋隆氏の『上を向いてアルコール』を読みました。 上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白小田嶋隆氏については、以前のご著書も何冊か読み、日経ビジネスオンラインでの氏のコラムには毎回膝を打ち、氏が講師を務める文…

しまじまの旅 たびたびの旅 70 ……澎湖北海・憧れの灯台と砂州の島々

台湾の離島・澎湖の、そのまた離島を訪ねるツアー。先日行った「猫の島」虎井嶼に続いて、今度は「北海」と呼ばれる海域の島々を巡るツアーに参加してみました。最北端にある目斗嶼の灯台を目指します。下の地図は、島と島の間隔が縦方向にぎゅっと圧縮され…

しまじまの旅 たびたびの旅 68 ……港園の牛肉麺と爵士冰城の紅豆牛奶冰

高雄に「帰って」きたら、何をさておき、まずは港園の牛肉麺を食べに行かなければなりません。地元で人気の牛肉麺屋さんで、日本で学んでいる高雄出身の台湾留学生も「あそこが一番!」と太鼓判を押すお店です。何度となく食べに行き、そのあっさりした味わ…

「語学では食えない」をめぐって

通訳翻訳業界ではよく知られている『通訳・翻訳ジャーナル』という雑誌があります。記事の内容は圧倒的に英語関係なので私はあまり買わないのですが(ごめんなさい)、たまに中国語や韓国語の特集が登場することもあります。また別冊として『通訳者・翻訳者…