インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほん

あたらしい家中華

極端な人見知りで人づきあいが苦手な私ですが、曲がりなりにも数十年ほど中国語関係のお仕事をしてくるなかで、中国人のお宅に招かれて食事をふるまわれたことが何度かあります。数十年で何度かしかないというのが社交性のなさを如実に表していますが、それ…

失敗の科学

先日の新聞に気になる記事が載っていました。1月2日に羽田空港で起きた飛行機の衝突事故に関して「調査による原因究明と捜査による責任追及が並行して進」んでいることに疑問を呈した記事です。大きな事故が起こると、日本ではその原因究明が行われる一方…

40歳がくる!

先日、仕事帰りに本屋さんへ立ち寄って新刊本をあれこれ立ち読みしていたら、真っ赤な表紙の目立つ本が平積みされているのに気づきました。書名は『40歳がくる!』で、アラフォーを迎える方のエッセイかな、自分も40歳を迎えたころは「不惑」と言いつつあれ…

子どもが「タブルリミテッド」になる心配はない?

偶然立ち寄った書店でこの本を見つけました。ビオリカ・マリアン氏の『言語の力』です。副題には「『思考・価値観・感情』なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?」とあります。これはおもしろそう! そして実際、とてもおもしろく刺激的な一冊でした。こ…

十二世紀ルネサンス

伊東俊太郎氏の『十二世紀ルネサンス』を読みました。この書名を見て、疑問を覚える方もいるかもしれません。ルネサンスといえば14世紀から16世紀の文化運動じゃないの、ギリシアやローマの文化を復興しようということで、ダ・ヴィンチとかミケランジェロと…

米原万里氏のことば

年末、北九州市の実家に帰省して、年末のうちに東京へ戻ってきました。せっかく帰省したんだから家族や親戚とゆっくり年越しすればいいのにと友人には言われます。でも、高齢の親にとっては逆に負担になりますし、私も年末年始のラッシュに巻き込まれるのは…

ネイティブにはなれない

ことしのお正月にオンライン英会話をはじめて、もうすぐ1年になります。1年と言ったって、基本的に30分のレッスンを週3回ですから、学習時間としてはたいしたことはありません。オンライン英会話以外にスマートフォンのアプリで学んだり、問題集に取り組…

AIで人はバカになる?

ChatGPTが世に公開される前の時代ですが、「コンピュータを使うと人は衰える」という記事を読んだことがあります。project.nikkeibp.co.jpいや、たしかに、パソコンやスマートフォンを使い始めてからというもの、漢字の「ど忘れ」や家族の電話番号さえ知らな…

体育がきらい

語学と演劇 私が奉職している語学学校では、通訳訓練に演劇を取り入れています。年に一度だけですが、秋の文化祭に向けて二ヶ月間ほど「語劇」の練習を行い、一般のお客様も含めた多くの観客に見てもらうというものです。「語劇(ごげき)」というのは聞き慣…

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがミサイル攻撃を行い、その報復としてイスラエル軍がガザ地区への軍事作戦を開始したのが10月7日。あれからちょうど1ヶ月、悲惨な戦争の報道に接し続けてほんとうに胸ふたぐ思いの日々が続いています…

シンクロニシティ

ふだん通勤列車のなかでは語学のアプリに取り組んでいるのですが、仕事であまりに疲れた日などはそこまで学習意欲がわかないこともあり、そんなときはよくYouTube動画を見ています。先日はたまたまアプリを開いて一番最初に出てきたこのショート動画を見まし…

好ハオ

職場の図書館で雑誌をあれこれ読んでいたところ、書棚にあるファッション雑誌に目が止まりました。表紙に「圧倒的に好ハオいモノだけ」という特集名が大書された『S Cawaii!』という雑誌です(2023年11月号)。 S Cawaii! 2023年11月号おおお、中国語の “好…

HHhH

2014年の本屋大賞翻訳小説部門で第1位となり、その後『ナチス第三の男』の邦題で映画化もされたローラン・ビネ氏(翻訳は高橋啓氏)の『HHhH プラハ、1942年』を遅ればせながら読みました。このところロシアとウクライナの戦争に関する書籍や双方の歴史に関…

宝くじという寄付

日本人は世界でいちばんケチな民族。そう言われたら「ムカッ」とくるでしょうか。でも実際のところ、例えばこちらのページによれば、人口ひとりあたりの寄付金額で日本は英国の2分の1、米国の10分の1しかないそうです。www.es-inc.jpまた英国の Charities…

語学における近道

マーカス・デュ・ソートイ氏の『数学が見つける近道』を読みました。ソートイ氏といえば同じ新潮クレスト・ブックスから出ている『素数の音楽』が大好きな一冊なのですが、この本も同様の知的好奇心を刺激される、とても面白い内容でした。 数学が見つける近…

自分を護るために降りる

私が勤務している職場の図書館には、処分されることになった蔵書を並べて、学生や教職員が自由に持ち帰ってよいというサービス(?)を提供するコーナーがあります。私はかつてここで飯塚朗氏の『中国故事』(角川選書)や木下順二氏の『中野好夫集』(日本…

ミッキーハウス

台湾滞在中にテレビニュースを見ていたら、しきりに“米奇屋”の話題を報道していました。“米奇”はミッキーマウスの「ミッキー」、“屋”は建物とか家のことですから「ミッキーの家」ということですが、要するにこれは日本語で言うところの「ゴミ屋敷」なんであ…

しまじまの旅 たびたびの旅 121 ……荒天、疲労レス、読書

沖縄に来てから今日でまるまる一週間、その間ずっと荒天が続いています。そのうち半分以上は暴風雨で、なおかつその半分以上は停電と断水の中で過ごしました。いったいこれはなんの罰ゲームなのというレベルですが、天気に文句を言ってもしかたがありません…

ウクライナ情勢についての三冊

ウクライナ情勢についての新書を三冊、先週末にまとめて読みました。①手嶋龍一氏と佐藤優氏の『ウクライナ戦争の嘘』と、②エマニュエル・トッド氏と池上彰氏の『問題はロシアより、むしろアメリカだ』、それに③舛添要一氏の『プーチンの復習と第三次世界大戦…

思い出の残骸

私が初めて中国へ行ったのは、たしか1992年か93年頃だったと思います。当時私は熊本県の水俣市に住んでいて、主に水俣病に関する資料館の広報誌を編集する仕事をしていました。その仕事のつながりで、福岡の印刷業者さんとやり取りをしているうち、福博綜合…

プーチン(上巻)

作家で元外務省ロシア担当主任分析官の佐藤優氏をして「古き良きBBCの、またイギリスのインテリジェンス文化が生きている。自らに不利な事柄であっても、あるいは不愉快な出来事であっても、プーチンの内在的論理を掴むというアプローチをきちんとしている」…

日本語が消滅する

山口仲美氏の『日本語が消滅する』を読みました。少々煽り気味とも受け取られそうなタイトルですが、少子化で人口減少フェーズに入ったこと、世界でも十指に入る「巨大言語」とはいえそれがほぼ日本列島でのみ使われていること、これまでにも様々な理由で言…

よもぎ大福の敷き紙が愛おしい

ジムでトレーニングをしたあと、よくコンビニに寄って和菓子をひとつ買っています。筋トレ後に糖質を補給するといいですよとトレーナーさんにアドバイスされているからですが、それよりなにより、トレーニング後の甘味がこたえられないほどおいしいからです…

「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす

いつも夕飯を食べながら見ているニュース番組は、途中に何度かコマーシャルが入ります。私はそのうちのひとつ、セブン&アイホールディングスの「明日にいいこと、つなげる、つづける。」という企業広告が以前から気になっていました。www.youtube.comStevie…

都会の暮らしが気に入っているというか今のところ都会にしか住めない

新刊が出るたびに買って楽しんでいる、よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』。最新第21巻が出ているのに気づかず、先日書店で偶然発見して買い求めました。街のうわさによると、連載されている雑誌ではすでに小日向氏とジルベールの結婚式が行われて…

千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話

済東鉄腸氏の『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』を読みました。長い長いこの書名がほとんどこの本の内容を表してしまっているのですが、最初は誰でも「どゆこと?」と思うかもし…

逝きし世の面影

長い間、読み通せないでいた本でした。渡辺京二氏の『逝きし世の面影』です。私はこの本が最初に出た1998年の葦書房版を買って持っていたのですが、何度読もうとしても第一章から先に進むことができず、ついには古本屋さんに売ってしまっていました。今回、…

パリピ孔明

留学生の通訳クラスで、自分のおすすめ本を各自が中国語で紹介し、それをみんなで日本語に逐次通訳するという授業をやっています。先日紹介を担当してくれた学生の取り上げた本は『パリピ孔明』(中国語の題名は《派對咖孔明》)でした。三国志に登場する軍…

人生で一番大切なのは思い出を作ること

先日、定期的にうかがっている仕事先で、ここ数ヶ月ほどお見かけしていなかった方に会いました。どうなさっていたのかを聞いてみたら、手術のための入院とその後の療養をされていたのだそうです。内蔵にがんが見つかったため切除したとのことで、幸いほかへ…

SNSからの「解脱」

ブログにあまりネガティブなことは書きたくないのですが、けさほど久しぶりにTwitterのタイムラインを見て思うところがあったので記しておきます。私は10年以上使っていた(というより中毒になっていた)Twitterから1年半ほど前に降りました。もう一つフィ…