インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ほん

僕が夫に出会うまで

七崎良輔氏の『僕が夫に出会うまで』を読みました。築地本願寺で初という同性婚の結婚式を挙げた氏の半生を綴るエッセイ。語り口は笑いあり涙ありとライトですが、ご自身の苦悩や葛藤や失敗までも赤裸々に公開する姿勢からは、世の中が本腰を入れてこの件に…

なぜリベラルは敗け続けるのか

岡田憲治氏の『なぜリベラルは敗け続けるのか』を読みました。政治学に関する岡田氏の著書はこれまでにもほとんど読んできましたが、この本では「安倍一強」を許した野党の誤りと、そしてかつてご自身も政治活動にさまざまな形で参加しながら野党同様に現在…

脳卒中とタバコの関係

受動喫煙対策を強化する「改正健康増進法」の一部がこの七月から施行されます。この改正法は、例えば小規模飲食店内での喫煙が依然認められるなど「ダメダメ」な点も多いのですが、それでも一歩前進したことはよかったと思っています。この法改正によって、…

翻訳の好みは人それぞれ

留学生の通訳翻訳クラスで「通訳翻訳概論」という授業を担当しています。通訳学や翻訳学の専門家でも何でもない私が担当するのは正直に申し上げて荷が重すぎるのですが、「そもそも通訳や翻訳とはどんな営みなのか」を様々な例を挙げながら学んでいくという…

本当の翻訳の話をしよう

村上春樹氏と柴田元幸氏の『本当の翻訳の話をしよう』を読みました。雑誌『MONKEY』に掲載された、小説(なかでもアメリカ近現代の)や翻訳に関する対談を収めた一冊です。本のタイトルはティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう 』へのオマージュで…

誰にでも起こりうることとして

池上正樹氏の『大人のひきこもり』を読みました。川崎市の登戸駅近くで起きた大量殺傷事件と、その直後に練馬区の元農水事務次官が息子を刺殺した事件。いずれも中高年の「ひきこもり」がクローズアップされましたが、自分もこれまでの来し方行く末を考える…

井上陽水英訳詞集

ロバート・キャンベル氏の『井上陽水英訳詞集』を読みました。書店でたまたま手に取ったのですが、歌詞の原文とその対訳が収められているだけの訳詞集ではなく、翻訳を行う際にキャンベル氏が日本語と英語の間を何度も行き来しながらその言葉の森に分け入っ…

一般向け医療本に登場する扇情的なイメージについて

私は十代の頃から「アトピー」に悩まされてきました。幸い症状はそれほど重くなく、現在では外見的にはほとんどアトピー性皮膚炎を発症しているようには見えませんが、それでもときどき痒みや皮膚の炎症がひどくなることがあって、この状態が雲散霧消したら…

一連の「浮かれよう」を目の当たりにして

東京都心の上空、昨日はやけにヘリコプターの爆音が聞こえましたが、これはアメリカのトランプ大統領が来日しているからなのかな? ここ数日、通い慣れた都心の街並みのあちこちに普段は見られない警官が立っているのに気づきましたが、これもおそらく警備の…

「着るものについて学ぶ」のその後

絶望的にファッションセンスがないものの、ビジネスカジュアルで通勤するようになって以降、「制服」みたいに着られる定番のコーティネートを探していました。制服というなら毎朝ほとんど何も考える必要のないスーツを選べばよいのですが、はっきり申し上げ…

着るものについて学ぶ

私はファッションセンスがありません。かつては美術大学で学んでいたのですが、その当時から現在にいたるまで、とにかく服のセンスがダメダメで、特に色彩感覚というか色彩のセンスが絶望的に乏しい人間です。なにせ、英語のロゴが大きく入ったパステルカラ…

ごはん、作りたくないですか?

先般の十連休に入る直前、同僚のとある知り合い(共働きの女性)が嘆息していたという話を聞きました。いわく…… 十連休なんてとんでもない。混雑が嫌いだからどこにも行けないし、家族4人分、朝昼晩のごはんを10日間作らなきゃならない。4人×3食×10日間で…

バリューブックスの新サービスを利用してみました

ゴールデンウィークの間に本棚の断捨離をしました。これは年に何回かやっていて、そのつど「古本募金」に寄付してきたのですが、今回はバリューブックスさんの新しいサービスを利用してみることにしました。こちらが一箱あたり500円の送料を負担するかわりに…

李叔同の書

清末・民国初期の詩人・書家にして教育者でもあった李叔同(り・しゅくどう、号:弘一)という人がいます。天津生まれのこの人のことを、私は天津留学時に知りました。当時、大学に書を学びに来ていたとある韓国人留学生から教えていただいたのです。特に彼…

拙を守って田園に帰る

毎朝毎晩、通勤電車に揺られるたびに、人の多さに酔いそうになります。自分もその「人」のひとりであるのですから、全く身勝手なものいいですが、東京都心の、出退勤時の人の多さはちょっと異様ですよね。これでも「ピークオフ」と言いますか、ジムで朝活を…

北欧風のオープンサンドイッチ

昨年初めてデンマークに行ってから、北欧風のオープンサンドイッチにはまっています。もともとサンドイッチが大好きで、何十年も前に買い求めた坂井宏行氏の『サンドイッチ教則本』に載っていた、コペンハーゲン伝説のオープンサンドイッチ店「オスカー・ダ…

「落とし穴満載感」ハンパない通訳者のお仕事

「シンクロニシティ」という現象をご存じでしょうか。Wikipediaには「複数の出来事が意味的関連を呈しながら非因果的に同時に起きること」と何やら難しいことが書かれていますが、要するに特に意図したわけでもないのに暮らしの中で起こる奇妙な符合のことで…

Simon Stålenhag 氏の世界にひかれる

スウェーデンの画家で Simon Stålenhag という方がいます。私はずいぶん前にネットでこの方の絵を見かけて、その独特の世界観に引き込まれてしまい、画集こそ持っていないのですが、ちょくちょく氏のウェブサイトに行ってはその作品の数々を眺めています。ww…

そばですよ

昔から「立ち食いそば」ファンです。駅のホームや駅周辺にあるお店で、特に寒い冬の朝など、出勤途中に食べるのが大好きでした。「でした」というのは、最近はあまり食べなくなってしまったからで、それは仕事のサイクルと場所、それに住んでいる場所の関係…

ゴールデンタイムへの進出を期待しています

十年以上読み続けている、よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』。主人公が自分と同年代で、実際の時間の流れと同じ速度で歳を取っていくこと、中年期に「あるある」な自分の身体の変化や親との関係、働きながら家事も担当する(当たり前ですけど)男…

粉もん好きにうれしいハーブパイ

最近は野菜と蛋白質を多くとって糖質を控えめにしようとしているのですが、生来の「粉もん好き」なので「糖質制限」とまでは行きません(し、そこまでする気も実はない)。それでも若い頃のように山盛りチャーハンや特盛りつけ麺をほとんど飲み物のようにお…

古本屋さんの新しい試み

日常的によく本を買います。でもどんどん本棚に本が増殖していくので定期的に整理しています。この時代、電子書籍という選択もあるのですが、何十冊も読んでみて、私の場合はやはり頭の中に残らないことが分かりました。「新しもの好き」としては痛恨の極み…

デスクワークは身体に悪い?

Twitterで、酔漢さん(@suikan_blackfin)に興味深い雑誌記事を教えていただきました。『日経サイエンス』の2019年4月号に掲載されている、H. ポンツァー氏の「運動しなければならない進化上の理由」という記事です。www.nikkei-science.comヒトと近い種であ…

通訳者に女性が多い理由と男性の家事

春は学校の学期が変わる季節。私が非常勤でうかがっている通訳学校も生徒募集のための公開講座が何度か開かれ、私も出講してきました。講座の最後にQ&Aの時間があるのですが、先日はこんな質問が寄せられました。 日本の通訳業界は圧倒的に女性が多いそうで…

「少しくらい……」という身勝手な行動への誘惑

ケイクス(cakes)で現在連載中の、エスムラルダ・田亀源五郎・溝口彰子の三氏による鼎談『表現とセクシュアリティーズ』を興味深く読んでいます。cakes.muこの連載は毎回興味深い話題が多いのですが、先回、ゲイ・エロティック・アーティストの田亀源五郎氏…

ハロー・ワールド

藤井太洋氏の『ハロー・ワールド』を読みました。ネット、ドローン、暗号通貨、自動運転車、スマホ用アプリにTwitter……今からほんのごくわずか先の世界が舞台の近々未来短編小説集です。いやもう、このギーク感と疾走感満載で、なおかつ最先端のネット技術(…

静寂とは

アーリング・カッゲ氏の『静寂とは』を読みました。社会に、とりわけネット繋がった社会の隅々に様々な情報があふれ、「常にノイズにさらされ、ストレスを抱える(帯の惹句より)」今にあって、静寂、静けさとは何かを思索した本です。 静寂とはカッゲ氏は世…

語学が楽器演奏や筋トレに似ている件について

集英社の季刊誌『kotoba』、現在発売中の春号は特集が「日本人と英語」で、合計百数十ページにわたって多彩な論者が登場し、とても考えさせられる内容です。その中で、マーク・ピーターセン氏とピーター・バラカン氏の「日本語と英語のはざまを考える」と題…

暗号通貨 vs. 国家

坂井豊貴氏の『暗号通貨 vs. 国家』を読みました。ビットコインに代表される暗号通貨(仮想通貨)の仕組み、特にその始まりから今日までの経緯と、ブロックチェーンの原理を分かりやすく解説した本です。とてもエキサイティングな内容なのですが、暗号通貨の…

漢字の成り立ち

中学生のころ、「レタリング」に惹かれていました。パソコンとプリンタで扱えるフォントが普及した今となってはそのあまりの変化の大きさに呆然としてしまうくらいなのですが、かつて文字を一つ一つ手作業で描き出すという職業があったのです。私はその職業…