インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ほん

フィンランドの “SISU” を勝手に感じてみる

カトヤ・パンツァル氏の『フィンランドの幸せメソッド SISU』を読みました(柳澤はるか氏翻訳)。 フィンランドの幸せメソッド SISU“SISU(シス)”というフィンランド語は他言語にひとことで翻訳するのが難しい概念のようですが、この本の第一章にはこんな形…

小確幸につながる炊事の「ころあい」

若者の「袋麺離れ」が顕著……という記事を読みました。blogos.comインスタント麺のうち、カップ麺は売り上げを伸ばしているのに対し、袋麺は「麺を茹でたり鍋や器を用意したりと調理に時間と手間がかか」ることに「特に若い人たちは不便さを感じて」おり、各…

ネットカルマ

二日ほど前の東京新聞朝刊に載っていた佐々木閑氏のこちらのコラム、とても共感を持って読みました。ネット社会の到来によって、仏教で言うところの「業(カルマ)」が「実際の物理作用として実体化」したというの、スゴくよくわかります。いわゆる「炎上」…

内向型人間のすごい力

スーザン・ケイン氏の『内向型人間のすごい力』を読みました。内向型と外向型という二つの性格の型をめぐって、これまでの研究から明らかにされた科学的知見を元に、企業や教育現場などでの対人関係のあり方を論じた本です。 内向型人間のすごい力 静かな人…

ロイヤルコペンハーゲンの度胸

デンマークに「ロイヤルコペンハーゲン」という陶磁器ブランドがあります。「ロイヤル」の名の通りデンマーク王室の御用達だそうで、日本の古伊万里に影響を受けたといわれる藍色の唐草模様パターンがトレードマークのシリーズを始めとして、多種多様な製品…

男の編み物(ニット)橋本治の手トリ足トリ

昨晩、橋本治氏の訃報に接しました。今朝の新聞にも追悼記事が出ています。『桃尻娘』シリーズをはじめ、氏の作品はあれこれと読みましたが、私が最も影響を受け、かつ名著だと思っているのは、この記事にも「趣味を生かし、男性向けの編み物指南書も手掛け…

しゃっくりとげっぷ

尾籠な話で恐縮ですが「しゃっくり」と「げっぷ」というものがありまして、いずれも日常的によくある生理現象ですけど、このふたつは明確に違いますよね。「しゃっくり」は主に横隔膜や筋肉の痙攣(けいれん)に伴って声帯から「ヒック」といった音が出る現…

「先生が授業しながら勉強するなんてひどい」をめぐって

先日、Twitterのタイムラインでこんなツイートを見かけました(Twitterから距離を置こうといいつつ、まだ依存してますね)。昔、ある授業の最終回で「私自身も大変勉強になりました。ありがとうございました」と挨拶をしたら、「先生が授業しながら勉強する…

日々コウジ中

細君に勧められて読んだ二冊。作者である柴本礼氏の夫・コウジさんはくも膜下出血に襲われ、一命は取り留めたものの、様々な機能不全が現れる「高次脳機能障害」を抱えることに。その発症から現在に至るまでの奮闘と家族のありよう、様々な人々とのつながり…

フィンランド語のしくみ

お正月休みに読んだうちの一冊です。白水社から出ている「言葉のしくみ」というシリーズのひとつですが、とても感銘を受けました。 フィンランド語のしくみ《新版》 (言葉のしくみ)「言葉のしくみ」とは、要するに「文法」のことなのですが、この本はできる…

ピダハン

ダニエル・L・エヴェレット氏の『ピダハン』を読みました。ブラジルアマゾンの奥地に住む少数民族・ピダハン族の言語を、30年近い歳月をかけて調査してきた記録です。 ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観言語を構成する音素が約10個と極端に少なく…

「二人になるのを避ける」理由について

先日の東京新聞朝刊に「『#MeToo』に萎縮する男たち」という特報記事が載っていました。いわゆる「ハラミ会(「ハラスメントを未然に防ぐ会」という、男性だけの飲み会)」や「ペンス・ルール(妻以外の女性とは二人きりで食事をしないという、ペンス米副大…

語尾上げの殺意

劇作家の永井愛氏に『ら抜きの殺意』という戯曲があります。これは「来れる(来られる)」「食べれる(食べられる)」のような「日本語の乱れ」を題材にした傑作喜劇です。こちらの記事で詳しく解説されています。business.nikkeibp.co.jp私自身は「ら抜き言…

『82年生まれ、キム・ジヨン』が問いかけるもの

東京医科大学の入試不正、とりわけ女性や浪人生への差別的な扱いがほかの大学でも行われていたのではないかという疑惑が広がっていますが、昨日は順天堂大学が謝罪会見を行っていました。www.nikkei.com「入学時点では女子の方がコミュニケーション能力が高…

異形の神たちにひかれる

Charles Frégerという方の『Wilder Mann』という写真集がありまして、これはヨーロッパ各地の祭りに伝わる「異形」の仮装姿を集めたものなんですが、その土俗的な意匠の美しさに思わず引き込まれます。 WILDER MANN (ワイルドマン)こちらにはCharles Fréger…

天野健太郎さんのこと

先日、翻訳家・天野健太郎氏の訃報に接しました。訃報はいつも突然のことですから今回も驚きましたが、今回の驚きはいつも以上でした。それは天野氏がまだ47歳という若さだったこと、そして直接お目にかかったことはないけれど、亡くなる直前まで精力的に翻…

「きちんと椅子を戻さない問題」をめぐって

うちの学校に「CALL(コール)教室」というのがあります。LL教室としての機能のほか、生徒ひとりひとりの机にパソコンが備えてあって、主に通訳訓練に使う教室なんですが、この教室で行う授業の最後に、いつも留学生のみなさんに言っていることがあります。 …

名刺は単なるツール?

先日Twitterで見かけて、思わず笑ってしまったこちらのツイート。親が「若い社員が名刺の交換方法も知らない」つってて紙の交換に方法もクソもないだろと思ってたら本当に決まり事があるっぽい茶の湯かよ pic.twitter.com/nTxdaXGdhJ— 看護メン (@nursemens4…

弓と禅

T.H.カーハート氏の『パリ左岸のピアノ工房』で、「わたし」がピアノの先生であるアンナから一冊の本をもらう場面があります。 ある日、ベヒシュタインの譜面台にひろげた楽譜を集めていると、アンナがわたしにちょっとした贈り物があると言った。音楽に対す…

パリ左岸のピアノ工房

小学生の頃、ピアノを習っていました。関西地方にかつてよく見られた棟割長屋のような「文化住宅」の一室が教室で、先生はその部屋でピアノだけでなくなぜか書道(毛筆と硬筆)も教えている、かなり年配のご婦人でした。練習の順番を待つ部屋にはマンガ雑誌…

運命 文在寅自伝

むかしむかし、中国の大学に留学していた頃、寮のルームメイトは韓国人の青年でした。とても真面目で親切な方で、年上の私を気遣って接してくれる*1ものですからこちらが恐縮してしまうほどでした。その縁で同じ留学生寮に住む別の韓国人留学生の部屋に遊び…

通訳や翻訳が好きですか?

先日、某所で英語の通訳者さんとお話をしていて、ふと先日読んだトム・ハンクス氏の短編小説集『変わったタイプ』の話題になりました。qianchong.hatenablog.comそこから、「実は私、カズオ・イシグロ氏の作品が好きなんですけど」 「私も!」 「どの作品が…

多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。

本を探している時にたまたま目にして、ネコのイラストにひかれて思わず買い、Kindleで一気に読んじゃった一冊。独特の書名ですが、これはかつて筆者のJam氏が友人から受けた一言だそうです。人間関係に悩んで、いつまでもそれを引きずって悶々としていたら、…

太平洋戦争 日本語諜報戦

武田珂代子氏の『太平洋戦争 日本語諜報戦』を読みました。本のタイトル、それに副題の「言語官の活躍と試練」からして興味をそそられます。 太平洋戦争 日本語諜報戦 (ちくま新書)アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダそれぞれの国において、各国が…

変わったタイプ

むかしむかし、タイプライターを持っていました。イタリアのオリベッティというメーカーの「Lettera32(レッテラ32)」という緑色の一台です。正確にいうと、かつて仕事で使っていた叔母に借りたものでした。「もう使わなくなっちゃったから」というわけで借…

「運動音痴」にこそ筋トレ

先日、いつも通っているジムでベンチプレスをやっていて、42.5kgを12回×3セット挙げることができました。周りでトレーニングしてらっしゃるアスリートの方々からすれば取るに足らないような重量ですが(そして、そもそも人と競うようなものでもないのですが…

『サピエンス全史』を読んで

壮大な物語でした。遅ればせながら読んだユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』上下巻です。宇宙の物理的現象の誕生から筆を起こして現在まで、さらには未来までをも見据えつつ「ホモサピエンス(人類)」の来し方行く末を論じた大著。生物学的な知…

『東京カレンダー』の妄想物語が興味深い

ここ十年ほど、同じ美容室で髪を切ってもらっています。「いっちょまえ」に美容室(しかも表参道!)に通っているのは、単にいつもお願いしているスタッフさんがすごく上手で、なおかつ何の説明もせずに切ってもらえるからラク、という理由なんですけど、お…

中国人のたくましいところに学ぶ

昨日Twitterで拝見した、こちらのツイート。上海の路地にいる裾上げ専門のミシン屋に、腕が良いから素材とデザイン画渡して価格決めてバッグ作ってもらったり、エアコン清掃に来た業者が仕事丁寧だから個人間で報酬上乗せして換気扇清掃もお願いした。私の思…

繊細でこまやかで美しい中国にひかれた

以前、日本で中国語を教えながら事業もなさっている中国の方とお話しする機会がありました。北京出身のその方は「北京があまりにも急速に変わるので、正直に言って悲しい。私の北京はどこに行ったの? という感じ」とおっしゃっていました。ちょうど吉川幸次…