インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

しごと

語学教師とエンパシー

オンライン英会話でレッスンの予約をする際に、チューターのプロフィールをよく読みます。生徒からの評価が高いとか、教えている内容が自分のレベルに合っているとかも大切ですが、私がとくにひかれるのは、チューターご自身がご自分の母語である英語以外に…

翻訳という「愉悦」

私が担当している留学生の通訳翻訳クラスには「英日班」と「中日班」の学生がいます。つまり英語・日本語間の通訳や翻訳を勉強している人たちと、中国語・日本語間のそれを勉強している人たち。みなさん、通訳や翻訳に興味があるのに加えて、言語を活かして…

オンライン授業で失われるもの

久しぶりにオンライン授業を担当して、ひどく疲れてしまったーーそんな話をブログに書きました。オンライン授業では、少なくとも語学のそれにおいては、教師と学生の間の、さらには学生と学生の間のインタラクションが希薄になってしまうことが、学習効果を…

Adobe Premiere Proで文字起こしができちゃった

仕事柄、通訳教材を作るときや自身の語学の勉強のためにも、よく外語の動画や音声の「文字起こし」を行っています。いわゆる「ディクテーション(中国語:聽寫)」というやつです。その昔は「テープ起こし」などと称していて、文字通りカセットテープに録音…

オンライン授業って何だったんだろう

一昨日の夜から昨日の朝にかけて、東京ではめずらしく積雪がありました。勤務している学校では交通の混乱などを予想して、昨日の授業はすべてオンライン授業に切り替えることを決定。私は火曜日に5コマも授業があるので、急遽Zoomでの出講となりましたが………

音声認識の進化と人間の役割

人工知能(AI)の技術が進化するなかで、機械翻訳の精度も向上しつつあります。そうした文字ベースの言語変換は実用に耐えうるようになってきた一方で、音声ベースの変換はまだまだ難しいという認識がありました。特に生身の人間は必ずしも明瞭な発話をする…

AIを使って英語や中国語の会話を練習する

ChatGPTは文字でやり取りするほかに音声でもやり取りできる……ということで、ChatGPTと会話の練習をしてみようと思いました。やりかたはネットや既刊本にさまざまな方法が書かれています。まずはパソコンのChromeに拡張機能の“Voice control for ChatGPT”を入…

AIの進化と人間の役割

先日AIを使った語学学習や翻訳について考えていた際、このブログに「自分はこうしたサービスを使う際に必要となるそうした知識や教養を育むことにこれからも専念すればよく、一方でこうしたサービスの便利なところはどんどん活用させてもらうというスタンス…

翻訳AIの進化と言語学習の意義について考える

Google翻訳やDeepLなどの機械翻訳、またChatGPTなどの生成AIによる翻訳が実用に供され、その能力がどんどん上がっていると喧伝されているなか、もう翻訳を学ぶ意味はなくなってきたのではないか、さらには外語学習自体が陳腐化していくのではないか……そんな…

オンライン中国語会話

オンライン英会話を1年続けてほぼ習慣化できたようなので、今度はオンライン中国語会話もやってみようと思いました。私はおおよそ30年前から中国語を学び始め、20年くらい前からは仕事で中国語を使ってきました。が、あろうことかあるまいことか、いまだに…

失敗の科学

先日の新聞に気になる記事が載っていました。1月2日に羽田空港で起きた飛行機の衝突事故に関して「調査による原因究明と捜査による責任追及が並行して進」んでいることに疑問を呈した記事です。大きな事故が起こると、日本ではその原因究明が行われる一方…

40歳がくる!

先日、仕事帰りに本屋さんへ立ち寄って新刊本をあれこれ立ち読みしていたら、真っ赤な表紙の目立つ本が平積みされているのに気づきました。書名は『40歳がくる!』で、アラフォーを迎える方のエッセイかな、自分も40歳を迎えたころは「不惑」と言いつつあれ…

子どもが「タブルリミテッド」になる心配はない?

偶然立ち寄った書店でこの本を見つけました。ビオリカ・マリアン氏の『言語の力』です。副題には「『思考・価値観・感情』なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?」とあります。これはおもしろそう! そして実際、とてもおもしろく刺激的な一冊でした。こ…

「テキトー」に海へ行く

通勤ラッシュ時に、大勢の通勤客が向かう都心方向ではなく、逆方向の空いた電車に乗ってどこかへ行ってみたい衝動に駆られることがあります。そのむかし東京で、今から思えばかなり「ブラック」な出版社に勤めていたころたまたま読んだ『宮本から君へ』とい…

AIで人はバカになる?

ChatGPTが世に公開される前の時代ですが、「コンピュータを使うと人は衰える」という記事を読んだことがあります。project.nikkeibp.co.jpいや、たしかに、パソコンやスマートフォンを使い始めてからというもの、漢字の「ど忘れ」や家族の電話番号さえ知らな…

体育がきらい

語学と演劇 私が奉職している語学学校では、通訳訓練に演劇を取り入れています。年に一度だけですが、秋の文化祭に向けて二ヶ月間ほど「語劇」の練習を行い、一般のお客様も含めた多くの観客に見てもらうというものです。「語劇(ごげき)」というのは聞き慣…

根津美術館の監視員

ここのところ仕事があまりに忙しくて精神が煮詰まってしまいそうだったので、やっと休みになった今日は根津美術館に北宋の書画を見に行ってきました。根津美術館は事前にネットで入場時間を予約する形になっていて、朝一番の時間帯で入場したので、それほど…

魔改造の夜と日本語劇

NHKに『魔改造の夜』という番組があります。www.nhk.jpありふれた家電やおもちゃを一流の技術者やエンジニアたちが寄ってたかって改造し、「えげつない」ほどのパワーを発揮するマシンに仕立てた上で三つ巴の戦いを行うという企画。ロボコンに似ていますけど…

雑談力

先般聞いていたBBCの「6 Minute English」にこんな会話がありました。 Do you have many friends? Yes, I have some close friends, but maybe not as many as I’d like. That’s interesting because often it’s women who have many friends while men find…

語学における近道

マーカス・デュ・ソートイ氏の『数学が見つける近道』を読みました。ソートイ氏といえば同じ新潮クレスト・ブックスから出ている『素数の音楽』が大好きな一冊なのですが、この本も同様の知的好奇心を刺激される、とても面白い内容でした。 数学が見つける近…

しまじまの旅 たびたびの旅 114 ……初めての沖縄と、ソーキそば、冷しレモン

日頃の行いが悪いという言葉は、こういうときに使うのでしょうか。最近身体の衰えが激しくて、縁起でもないけれど、なんとなく人生も終末に近づいているような気がするので、この夏、元気なうちに沖縄へ行くと決めていました。沖縄を飛び越した台湾へはもう…

中国語でアルファベット

アルファベットをどう発音しますか。綴りを説明するとき、あるいは記号としてのアルファベット、型番や商品名などに含まれているアルファベットを読み上げるとき、日本語母語話者ならおおむね以下のように発音すると思います。 A(エー/エイ)、B(ビー)、…

ざんねんなえいごきょうし

今朝の東京新聞朝刊に、師岡カリーマ氏が「夢は摘まないで」というコラムを寄稿されていました。英語教師に「アラビア語なんて、月一回も使う機会あるの」とか「国益になるの」などと言われたアラビア語講師の話を引きつつ、アラビア語がいかに存在感のある…

ALSOKと「ら抜き・めちゃ」

ALSOK(綜合警備保障株式会社)のテレビCM「なにできる?篇」が興味深いです。www.youtube.com ALSOKのスマホ防犯/なにできる? なにできる? 自分で見れる 外から見れる/めちゃ便利 ALSOK 「ら抜き」言葉に「めちゃ」。私個人としては聞くに堪えない日本…

外国人がコンビニで働くことの「スゴさ」

けさは時間がなくてお弁当をつくる余裕がなかったので、出勤前にコンビニに寄っておにぎりとサンドイッチを買いました。レジの店員さんは外国の方で、胸のネームプレートから拝察するにインド人とお見受けしました。日本語には独特のアクセントがありますけ…

日本語が消滅する

山口仲美氏の『日本語が消滅する』を読みました。少々煽り気味とも受け取られそうなタイトルですが、少子化で人口減少フェーズに入ったこと、世界でも十指に入る「巨大言語」とはいえそれがほぼ日本列島でのみ使われていること、これまでにも様々な理由で言…

語学をあきらめずに続けるには

「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」とは、言わずと知れたマンガ『SLAM DUNK』に出てくる安西先生のセリフです。このセリフはひとりバスケに留まらず、およそ人生のあらゆる場面に敷衍できるからこそ名言となっているわけで、とうぜん語学もその例に漏…

学校でのAI活用方針

以前、このブログの「アクセス解析」で、Facebookからのアクセスが急に増えたことがありました。私はもうFacebookからは「降りて」しまっていて、単にMessengerの機能を使っているだけなのですが、興味を持って久しぶりにタイムラインを見に行きました。そう…

試験をなくしてみた(その後)

作家の内田百閒氏は語学講師だった頃、作文の課題に評価をつけなかったーーそんな話が先日の東京新聞「筆洗」欄で紹介されていました。「作文を課するのは、自分で何かを書き綴る修練をさせればいいので、彼等が文稿を提出した時、すでに作文授業の目的の大…

客に媚びない

先日、東京は北参道駅近くの裏道を歩いておりましたら、とつぜんイタリア料理のお店が現れました。入口ドアの横にこんな看板が置かれていて、こう書かれていました。「お得なセットメニューはございません」。お店のウェブサイトによると、こちらのお店には…