インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

しごと

「語学では食えない」をめぐって

通訳翻訳業界ではよく知られている『通訳・翻訳ジャーナル』という雑誌があります。記事の内容は圧倒的に英語関係なので私はあまり買わないのですが(ごめんなさい)、たまに中国語や韓国語の特集が登場することもあります。また別冊として『通訳者・翻訳者…

言語リテラシー教育(のようなもの)の必要性について

先日Twitterのタイムラインで拝見したtoraneko285氏(@toraneko285)のツイート。会議通訳の資料を会議開催日のギリギリになってどっさり送ってくるのはまさに「あるある」なんだけど、どうにかならないのだろうか。日本語を聞いて中国語に訳すのに、前日の…

人圧とダッシュおじさんについて

これはたぶん年齢のせいだと思うんですけど、ここ数年、人の多い場所に行くだけで気分が悪くなるようになりました。何というか、人の圧力みたいなものを感じるようになったのです。とりあえず「人圧」とでも呼んでおくことにします。まず通勤時の満員電車。…

「正しければ伝わる」わけではないです

先日の東京新聞朝刊特報欄に「世代を超えた社会運動は可能か?」という、とても考えさせられる記事が載っていました。 立命館大准教授の富永京子氏が若者への取材を通じて指摘する、大人(あるいは年長世代)と若者の政治や社会問題に対するスタンスの違い。…

ネット動画に見る通訳者のイメージ

先日Twitterで「 #一般人の方が時々誤解しておられること*1」というハッシュタグを見かけ、私もこんなツイートをしました。話せれば、訳せる。#一般人の方が時々誤解しておられること pic.twitter.com/ywcRh2KUaj— 徳久圭 (@QianChong) 2018年7月18日「話せ…

語学の「財産使い果たし系」について

こんなことを言っちゃうと身も蓋もないのですが、ここ十年ほど在日華人や華人留学生と一緒に通訳訓練や日本語学習を行ってきて感じるのは、やはり語学の習得には「向き不向き」があるのだな、ということです。学校教育では、語学の科目、例えば「英語」が「…

よしながふみ氏の秀逸な作話術と杉田水脈氏の幼稚な妄言について

前巻の発売から約十ヶ月ほど、よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』の最新第14巻を読みました。 きのう何食べた?(14)このマンガの秀逸なところを挙げれば切りがないのですが、そのひとつは筧史朗(弁護士)と矢吹賢二(美容師)というゲイのカップ…

心と身体に効く筋トレ

昨日「cakes」で読んだこちらの記事。cakes.mu移動中の電車の中で、スマホで読んでいたのですが、「同感!」の部分が多すぎて、思わず降りる駅を乗り過ごすほどでした。「ビジネスパーソンが最高のパフォーマンスを実現する」という惹句に、また「意識高い系…

塚本慶一先生のこと

中国語通訳者の塚本慶一氏が亡くなりました。享年七十歳。最初Twitterで、その後ネットの報道で訃報に接しました。j.people.com.cn塚本慶一氏といえば、日本における中国語通訳者の草分け的存在。著書の『中国語通訳への道』は旧版、新版ともに私も繰り返し…

消えていく句読点と新しい文体

スマホやパソコンの既読メールを整理していてふと思ったんですけど、華人の中国語メール、特にショートメールやLINEのトークでは、みなさん句読点などの記号(標點符號)をほとんど使わないんですね。面白いです。私は「ガイジン」だから中国語を書く=作文…

教師だって生徒を選びたい

先日、cakesで読んだ、こちらの記事。cakes.mu入社試験における採用基準が「素直であり、自ら意思表示のできる人」で「一緒に働きたいと思うかどうか」だというの、とても共感します。もちろん能力やスキルだって大切ですけど、試験で一定程度の選別をしたら…

動詞がドーシても必要なんです

中国語が母語である華人留学生と「中国語→日本語」の通訳訓練をしていると、いくつか興味深い現象が見られます。そのうちのひとつは、訳出する時に日本語の文章の係り受けがねじれる、特に最後に動詞を入れることを忘れる、という現象です。中国語は、英語ほ…

2020年の「アレ」に対する危機感

先日、ノンフィクション作家・安田峰俊氏のこの記事がTwitterのタイムラインに流れてきました。bunshun.jpわははは、同感です。でも日本代表が決勝リーグに進んだということで、新聞やテレビなどマスメディアではさらに大々的に報道が流れてきていますから、…

退化を空想していたら現実はその先を行きつつあった

華人留学生の通訳クラスではいま、日本語の成語や慣用句やことわざを学んでいます。中国語もこうした言葉は豊富ですが(というか、中国から入ってきたものが実に多い)、それらを引き比べて覚えていくと、双方の文化の違いや言語表現の発想の違いが分かって…

黒歴史はあまり聞いたことがないって

華人留学生の通訳クラスで、無国籍の問題に取り組まれている陳天璽氏の講演を教材に使いました。【一席】陳天璽:無國籍生存とても分かりやすい中国語ですし、無国籍者としてのご自身の体験も語られており、国民国家とは、国籍とは、難民とは……と、考えさせ…

語学をもっと欲張ればいいのに

日本語を学んでいる、あるいは日本語と英語や中国語との通訳や翻訳を学んでいる留学生から、ときどきこんな相談というか、要求が聞かれます。 学校で教わる日本語はすごく「きっちり」してるけど、日本人の友達とかバイト先の日本人はそんな日本語を話してま…

「この中国語はおかしい」について

通訳訓練では毎学期必ずと言っていいほどあることなのですが、今期も華人留学生から教材の中国語について「この中国語はおかしい。普段の生活でこんなことは言わない」との発言がありました。う〜ん、まあ語学教材はそもそもが架空の設定ですし、とはいえ文…

中国語文法の魅力について小一時間語る

先日、通訳のクラスで文法の話になった際、何人もの華人留学生が口々に「中国語なんて文法がテキトーで、無いも同然です」などと卑下しつつ言うので、驚きました。中には大学や大学院を卒業してから日本に留学してきた方もいるんですよ。私は「アホかー!」…

オリンピックのボランティアと大学連携協定について

参加要件が厳しすぎるとして話題になっていた東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ですが、大会組織委員会が要件を見直したというニュースに接しました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180607/k10011468441000.htmlwww3.nhk.or.jp ※201…

Twitterで起こる「発酵」

もう何年もTwitterを利用しています。理由のひとつは新聞やテレビや雑誌などとはまた違う種類の話題が頻繁に(あるいはそれらのメディアよりはるかに早く)飛び込んでくるのが面白いからです。また140字という字数制限の中で文章を書くことが自分の考えをま…

日本人が日本語と外語を行き来することについて

日本で学ぶ留学生が日本の暮らしで一番「心折れる」のは、不自然な日本語に対する日本人(日本語母語話者)の許容度があまりに低いことだそうです。例えばコンビニのバイトで、日本語の発音や統語法が少しでも不自然だと、あからさまに嫌な顔をされたり笑わ…

学校が後押しする「通訳ボランティア」について

先日、TwitterでNHKのこの記事が「東京五輪・パラのボランティア」「やりがい搾取」というキーワードでトレンドに入っていました。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180521/k10011447361000.htmlこの件に関してはこれまでにも発信してきましたが、この期…

普通救命講習に参加してきました

先日申し込んでおいた、普通救命講習に参加してきました。qianchong.hatenablog.com四時間の講習は、教材費込みで1400円。テキストと、人工呼吸の際に用いる「蘇生用マウスピース」が配布されます。 学んだことは、以下の四つです。①心肺蘇生のやり方 ②自動…

暗く小さな声の生徒を前にして

通訳の訓練をしていると、生徒さんの中には、声が暗く、小さく、元気がない方がまま見受けられます。自分の訳出に自信がないので小声になるのだと思われますが、どうもそれだけではないみたい。訳出のたびに「もっと声を大きく、活き活きと、語りかけるよう…

ボランティアに頼る「商売」はおかしいと思います

先日、Twitterのタイムラインにこんなツイートが流れてきました。【 #通訳ボランティア 】英語コミュニケーション能力を発揮して、活躍してみませんか?#TOEIC #ラグビー #ボランティア秩父宮みなとラグビーまつり2018▼詳細はこちら— TOEIC (@TOEIC_japan) 2…

ぎっくり腰との四半世紀にわたる戦い

はじめて「ぎっくり腰」になったのは、会社員をしていた30歳の頃でした。期末の棚卸しか何かで大きなキャビネットの引き出しを移し替えていたときに「ぎっくり」と。最初は軽い違和感だけだったのが、みるみる痛みが広がって、半歩歩くのも困難なくらいに。 …

すてきな「公私混同」

先日、人名や地名、外来語など、華人留学生が苦手な単語を中心としたクイックレスポンス練習用にQuizletを導入してみました。qianchong.hatenablog.com このQuizlet、サイトの利用もスマホアプリも無料です。ただ、教師が教材を作る際、自分で音声を吹き込み…

外語や外国とは「健全」につきあいたい

フリーランスライターのふるまいよしこ氏がnoteに寄稿された、翻訳家・天野健太郎氏へのインタビュー、とても興味深く読みました。有料記事ですが、こういう出費は惜しんじゃいけません。note.mu天野健太郎氏の翻訳で私が最初に読んだのは、龍應台氏の『台湾…

華人留学生の「鬼門」単語攻略のために

新学期が始まったばかりのこの時期、華人留学生の通訳入門クラスではまず人名や地名の「クイックレスポンス」から始めます。クイックレスポンスは、二人ひと組になって、出題側が日本語か中国語の単語を言い、回答側が即座にその訳語を言う訓練です。もし回…

「カネの話は汚い、はしたない」と決めつける前に

山崎元氏の『お金で損しないシンプルな真実』を読みました。題名が題名ですし、装幀も薄くて活字が大きい割には大仰なハードカバーで、とかく「カネの話は汚い、はしたない」と考える方々は手に取りにくいかもしれませんけど、いやいや、健全なお金のリテラ…